おはしで治す現代病:お茶を着る? 緑茶染め繊維が皮膚炎を抑制

1996.12.10 15号 19面

アトピーなどを根本から治すには、何かを食べたり塗ったりするより、からだ自体の免疫力を強めることが大切ともいわれている。そうは言っても、かゆい時には何としてでもすぐにそれをとめたいもの。ニンニク・米ヌカ・シソ油・入浴・ハリ・水…、皮膚のトラブルには、数多くの治療法があったが、今回あらたに驚きのニューフェイスの方法が現われた。成人病防止効果などで注目のお茶が、なんと洋服になった! 緑茶で染めた繊維に、アレルギーなど皮膚の炎症を抑える効果が認められたのだ。ステロイド剤の副作用も問題視される中、緑茶の優れた効果が染め物でも発揮できれば、接触皮膚炎やアトピー性皮膚炎で悩む人のための衣類や寝具などに役立てることもできると期待されている。研究を発表した、静岡県立大学薬学部の杉山清氏にうかがった。

Q 緑茶を飲むとアレルギーを抑える働きがあることは、過去の研究で明らかですが、今回は染料。洋服を着ない動物を使って、どうやって実験したのですか?

A 最近、繊維をそのまま粉末にする技術が見つかりましてね、動物実験を行うことが出来るようになったんです。まずマウスの薄い耳にアレルギーによる炎症を起こす刺激物質を塗り、腫れた患部の厚さで炎症の程度を調べます。そこに粉末にした緑茶染め繊維を混ぜた軟膏を塗布して、その抗炎症効果を測定するんです。

その結果、緑茶染め繊維を含ませた軟膏は、何も含んでいない軟膏と比べ、明らかに炎症を抑えることが分かりました。ステロイド軟膏ほどではないが、明確な効果が認められたのです。

Q アレルギーにもいろいろありますが、どんな症状に効果があるのですか?

A アレルギー反応は大きく分けて1型(接触して15~30分で皮膚が赤くなる即時型)と4型(1~2日後に赤くなる遅延型)があります。緑茶はその両方に効果があることが分かっています。アトピー性皮膚炎のメカニズムは完全には解明されていないが、1型と4型の特徴をあわせもつことから、緑茶染め繊維はアトピー性皮膚炎にも改善効果が期待できると思われます。

Q 緑茶なら副作用も心配ないですね。でも洗ったら効果も薄れるのでは?

A 十数回洗った繊維を使ってもあまり効果は変わりません。もう一つ緑茶で注目できるのが抗菌作用。緑茶染め繊維は大腸菌や黄色ブドウ状球菌に対して明らかな抗菌作用を示すことも確認されています。皮膚に常在する黄色ブドウ状球菌は、アトピー性皮膚炎や寝たきり患者の床ずれを悪化させる要因となることが知られています。そのため緑茶染め繊維は、アトピー対策医療のほか、病院の介護用品や医療用品、寝具の素材としても期待されています。

静岡県内の医療施設ではこの繊維による寝具、医療用品の試験的な使用が始まっており、医療用途以外でも緑茶染め繊維を用いたTシャツや靴下などが販売されています。効果についてまだ最終的なデータはまとまっていませんが、皮膚のかゆみがとれてきたという声が多くきかれています。

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