Mr.&Ms.働き盛りは遊び上手 フラリ旅・温泉編 立山・黒部の湯

1996.10.10 13号 5面

深まりゆく秋。本当に気の合う友だちと連れ立って、フラリとどこかへ旅してみたくなる。こんな旅では、大人数の団体旅行ではできない行きあたりばったりの気ままな寄り道こそ楽しいもの。天野隆介さん(東京、自由業)は9月初め、富山・八尾の風の盆祭りを見た帰り、男二人、黒部峡谷の温泉をイキオイで三軒ハシゴしたという。風の匂のする秋のフラリ旅の話を聞かせてもらおう。

◇   ◇   ◇

「お祭りのあとまだ一日時間の余裕があったんで、それじゃあ宇奈月に出てトロッコ電車に乗ってみようかって話になってね。本当の思いつきです」。小さな機関車に引かれガタゴトと音をたてる車両の窓から、ゆっくりと黒部川を遡る風景を眺める。山頂と谷合の落差は一五〇〇~二〇〇〇mの峡谷美。のんびり一時間半、深いV字谷、猿飛峡があらわれたところで、終点の欅平(けやきだいら)に着いた。

「駅前の看板を見たら、いま通ってきた峡谷沿いに温泉のマークの着いている所が三ヵ所ある。それじゃあ、帰りはそこに立ち寄りながら戻ろうかと」。

まずは欅平から白馬岳方面に四〇分歩いた祖母谷(ばばだに)温泉。渓流に面した木造りの建物の露天風呂はなかなかの開放感、正午の時間に人の影はない。

次は鐘釣の駅で降りて鐘釣温泉。「ここは川原のところどころに湧出しているんですよ。ブナとかナラの林に囲まれた中でね、石で囲ってそれぞれ自分の湯船を作るんです。僕はぬるめの湯が好きだから、冷たい黒部の水をたっぷり入れて、二時から三時までゆったりつかっていました」。湯かげんまで自分好みとは嬉しい話。最後は、黒薙下車で宇奈月温泉の源泉の黒薙温泉。「一軒宿の昔からの湯治場。夕暮れの露天風呂もいいものです」。

温泉に向かう時の小道具は、何といっても缶ビール。三つの温泉ハシゴで三五〇ミリリットル缶を三缶、内から外からいい気持ち。ちなみにアルカリ性単純温泉、硫黄泉など三つのお湯を浴びて天野さんたち、胃腸病、打身、運動麻痺などなどを改善と、数々の効能を身に受けたハズ。「さあ、能書きは知りませんけどね。確かに身体に心地良い旅でした」。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら