ヘルシートーク:クリエイティブディレクター・アウトドア作家・環境漫画家 本田亮さん

2018.02.01 271号 05面
本田さんは「葉っぱアーティスト」の顔も。木の葉でつくられた不思議な魚。昆虫も鳥も、大型哺乳類も爬虫類も。季節によって表情を変える日本の豊かな自然を生き物という形で楽しんで。

本田さんは「葉っぱアーティスト」の顔も。木の葉でつくられた不思議な魚。昆虫も鳥も、大型哺乳類も爬虫類も。季節によって表情を変える日本の豊かな自然を生き物という形で楽しんで。

 ◆忙しい時こそ遊びが必要 ストレスゼロ、家庭円満のワークライフバランス術

 「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」という言葉を耳にする機会が増えました。日本でトップクラスの忙しさで有名な広告代理店で、ストレスを抱え込むことなく人の3倍働き、人の3倍遊んできた本田さんのポジティブな考え方、ダイナミックな休暇取得法を聞いて元気をもらいましょう。(日本食糧新聞社 食品産業文化振興会講演会「幸せサラリーマン術 仕事もプライベートも3倍楽しむ方法」から)

 ●金曜日と月曜日を断ち切ってリフレッシュする方法

 広告代理店にいた時、仕事ができる人ほど家族が壊れていくのを目の当たりにしました。カッコイイ局長が、家に帰ると居場所がないとか。僕も1ヵ月に残業100時間以上、帰宅は毎日深夜、しかも通勤時間は1時間半。さらに土日は作家活動をしていましたが、そうならないスタイルを生み出しました。

 サラリーマンは平日は忙しく、金曜になると上司が「お疲れさま!」と飲みに連れて行く。土曜は疲れ切りダラダラと、日曜は明日の会議のことで頭がいっぱい。つまり金曜と月曜がつながっている状態です。僕はそれを断ち切った。平日は深夜まで働くけれど、金曜は夕方5時半に退社、7時には家に。キャンプの準備の電話を妻にしておいてあるから、すぐに荷物と家族を連れて車で出かけます。蓼科や八ヶ岳に9時半頃には到着して1泊。土曜の朝は早朝から高原の空気を吸って、1日中子どもと自然の中で遊びます。

 そしてもう1泊。日曜の朝早い時間に帰路に。この日程ならば渋滞もなく、快適に午後イチには家に着きます。その後はゆっくり明日の会議に備える。会社も休まず2泊3日遊ぶことで気分もすっきり、企画力も増します。月に1回はこれをやっていました。

 ●感動は保証します! 人生最強のビールを飲むための転覆隊

 男同士のいい遊び仲間もいます。「命の保証はない、感動の保証はある」というキャッチフレーズの下、集まったカヌー仲間「転覆隊」。川と取っ組み合いをして遊ぶ、そして、人生最強のビールを飲むのを命題にしています。「救命ロープより先にカメラを出す」「人の命より自分のカヌー」、それが転覆隊の特徴(笑)。

 『ママチャリお遍路1200km』という本を出したのですが、これも転覆隊が一緒。きっかけは妻の病気でした。うちの妻は喜怒哀楽、すべてが3倍付けの人で、いつもびっくりしているか喜んでいるか、怒っているか。でもものすごく愛想がいいので、近所のお店から贈答品が届いたりします。その明るいカミさんが50歳の時、悪性骨肉腫になり、大たい骨を取りかえることに。12時間の手術は成功しましたが、再発したら助からないと。これは神頼みしかない。しかし僕は何ヵ月も休暇を取れません。早く回るためにママチャリでのお遍路に踏み切りました。そのおかげかどうかは分かりませんが、再発もなく完治しています。

 以後、ママチャリにはまってしまい、隊員たちと奥の細道2000kmを辿り、芭蕉と同じところでサラリーマン川柳的な句を詠んでみたり。東京からハネトの格好をしてねぶたに行き、そのまま踊って帰って来たことも。こちらは900km。遊ぶネタにはこと欠きません。

 ●人生的尺度で考えれば気楽に生きていける

 忙しい時に無理して遊んで飲むビールは格別にうまい。時間のある人が豪華客船で世界一周しながら飲むビールは、さほどうまくないんじゃないかと思いますね。初体験というのも大切にしています。2度目は決して1度目を超えられない。気に入ったペンションがあるから何度もそこに行くという人を知っていますが、人生を楽しくするチャンスをつぶしているような。気に入ったら、それは思い出に取っておけばいい。

 1年365日、毎日新しいことをして新鮮な体験を積み重ねると、それが面白い人間をつくることになる。1回やってみて嫌いならそれで構わないけれど、食わず嫌いはもったいないですよ。

 多くの患者さんを見送ったオーストラリアの看護師、ワレさんが「死ぬ前に語られる後悔TOP3」というのをネットに書いておられました。亡くなる人は皆、同じことを言うそうです。(1)もっと自分らしく生きればよかった。(2)あんなに一生懸命に働かなくてもよかった(3)もっと自分の気持ちを出す勇気を持てばよかった、だそうですよ。

 日々の生活や会社でストレスを抱えて悩んでいる人が大勢いますが、時間的に短い単位で悩んでいることが多い。僕は人生的尺度で物事を判断しなさいと言います。2週間の休みを取る時に、「皆に迷惑をかけるから」。そんな人には、あなたの人生70年のうちで2週間なんて米粒みたいなもの。その休暇と体験が、将来キラっと輝くダイヤモンドになるとアドバイスします。

 ●プロフィール

 ほんだ・りょう 1976年、電通入社。CMプランナーとして、「ピッカピカの1年生」や、東日本大震災時のAC広告「こだまでしょうか?」など数多くのキャンペーンCMを企画制作。200本以上の広告賞を受賞。2011年に早期退社、「会社生活を3倍楽しむワーク&ライフバランス」の講演活動中。『エコノザウルスが行く』(学研)、『サラリーマン転覆隊が行く』(小学館)、『ママチャリお遍路1200km』(小学館)、『40歳からの仕事で必要な71のこと』(大和書房)など著書も多数。

 ○『40歳からの仕事で必要な71のこと』大和書房

 定価:1,400円(税別)

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