アポなし!新業態チェック(141)「デニーズダイナー 八雲プレステージ」

2019.05.06 483号 11面

 ●デニーズが目黒の既存店をリブランド デリや肉料理、酒類が豊富な新業態

 セブン&アイ・フードシステムズが昨年の暮れ、「デニーズ」をリブランドした新業態「デニーズダイナー 八雲プレステージ」をオープンした。同店は、既存の八雲店を新しいコンセプトに則ってリニューアルしたもの。多様化する社会環境の変化に対応することを狙って、従来のように全店が同じ営業内容で統一されたチェーンストアのスタイルではなく、地域の客層のニーズに合った価値を提供するというコンセプトに転換した。店舗のデザインやロゴマークも刷新し、ファミリーレストランのイメージを覆している。

 メニューは、日替わりで10種類以上用意されるというデリが特徴の一つ。店内に入るとガラス張りのキッチンスペースに、その日のデリが並べられている。ランチにはすべてにデリ2品とドリンクバーが付く。料理は「イベリコ豚と濃厚たまごのカルボナーラ」(1400円・以下すべて税抜き)などのパスタや「ハーブ三元豚のポークジンジャー」(1700円)といった肉料理、リゾットやサラダのプレートランチ(1200円)があり、パスタと肉料理、サラダのプレートにはパンも付く。

 グランドメニューでは、「アンガス牛のグリル~シャルルマーニュ風」(1900円)や「特製 お肉の盛合せプレート」(3400円)といった肉料理のバラエティーが大きく増える。デリは盛り合わせとして注文できるし、パスタもアイテム数が多い。デザートは自家製で、プリンやティラミスなどが600円から。お子さまメニューやちょっとしたサイドディッシュもあり、アルコール類では数種類のボトルワインも用意されている。

 ★けんじの評価 今後どのような展開を計画するのか疑問

 オープンから2ヵ月ほど過ぎた平日の午後、同店を訪れてみた。店舗は港区と世田谷区を結ぶ目黒通りに面した交差点の角地だ。周辺は都内でも古い高級住宅地。東急東横線の都立大学駅と自由が丘駅から、等距離ぐらいだろうか。建築躯体はそのままにデザインが大きく刷新されている。白く塗装されたレンガに濃い茶色のロゴマークがシックな印象だ。店内の客席配置には余裕があり、メニューがそれなりの価格帯であっても違和感はない。この店に関していえば、今回のリブランディングは成功しているように思える。ディナー時間帯にどれだけ集客できているのかは分からないが、ランチであれば、近くに住んでいたらしばしば利用したいと思う店だ。

 しかし筆者には、「この店が成功したとして、その後はどうするのだろう?」という疑問が拭えない。「デニーズ」は現在370店ほどあるようだ。すべての店を地域のニーズに合わせてつくり変える計画なのだろうか。もっと難しいのは店舗運営だ。この価格帯のディナーレストランでは顧客の要求度も高い。店ごとに営業内容が違えばなおさらだろう。多ブランド展開を行っているカフェ系チェーンの多くも、そこで苦労している。デニーズはいったいどこへ向かおうとしているのか。

 同店は、「店に入ったとき」「メニューブックを見たとき」「最初の1品が運ばれてきたとき」「デザートが運ばれてきたとき」の4回、来店客から歓声が上がるレストランを目指しているのだという。これは新規客を想定してのことなのだろう。個人的には、リピート客の顔を覚えてくれるような店になってほしいと思う。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ●店舗情報

 「デニーズダイナー 八雲プレステージ」

 開業=2018年12月19日/所在地=東京都目黒区八雲3-12-15

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 編集協力:株式会社イートワークス(http://www.eatworks.com/)

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