本格焼酎特集
◆本格焼酎特集:炭酸割り、本格焼酎へ誘引 各社、提案商品投入目立つ
日本酒造組合中央会がまとめた19年(1~12月)の本格焼酎課税移出数量は、40万9023klとなり前年の42万5309klと比べ3.8%減だった。引き続き減少傾向にはあるが、減少率は前年比で小さくなった。原料別でみると「芋」が18万2170kl(構成比44.5%)で前年比4.1%減。「コメ」は3万4569kl(同8.5%)で同4.9%減。「麦」は17万1223kl(同41.9%)で同3.1%減。「そば」は7994kl(同2.0%)で同8.4%減。以下、その他となる。
●世界に広がる発信の場 どこまで広げられる次世代の顧客づくり
RTD、ハイボールなどへの支持拡大による影響で、市場全体は引き続き厳しい傾向にある。そんな中、各社商品で堅調に推移しているのがパック。特に900mlのスリムパックでは、主力銘柄を中心に品揃え強化が広がる。「家庭で手軽に楽しむことができ、後処理が楽」という点で利用が広がっているとみられる。本格焼酎そのものの価値に加え、「触れやすさ」「使いやすさ」という面が評価された事例だ。
炭酸割り提案に関しては、依然として各社で動きが目立つ。同提案への適性を考えて発売された商品で、継続的に支持を伸ばすものが出てきた。また、銘柄のブランド力を生かしたハイボール缶も酒類売場に広がり始めている。“炭酸割りをきっかけに、本格焼酎の魅力を知ってほしい”という言葉は、各社からよく出てくるワード。商品を通して、消費者の評価が数字として現れてきた今。この潮流をどこまで広げられるかが、次世代の顧客づくりに大きく影響しそうだ。
最近の業界全体での大きな動きとして、高橋酒造、薩摩酒造、三和酒類の3社が、バーテンダー後閑信吾氏が率いる「SG Group」と開発した「The SG Shochu」。バーで楽しむ焼酎として、2月に全国料飲店向けに発売された。企画・監修は「SG Group」が担当。本格焼酎を日本が育んだ蒸留酒として、バーの視点から捉え直した。高橋酒造が「The SG Shochu KOME」40度、薩摩酒造が「同 IMO」38度、三和酒類が「同 MUGI」40度をそれぞれ製造販売している。原料分野の異なる3社が手を組み、バーの視点を取り入れ、一体となって新コンセプトに挑戦する取組み。新たな市場活性化へつなげられるかが注目される。
世界に目を向けるとロンドンに本部を置く世界的なワイン教育機関・WSET(Wine&Spirit Education Trust」のカリキュラムに、昨年日本の焼酎や泡盛が組み込まれた。1月には、ジェトロ鹿児島がWSETの講師を対象にセミナーを開催。著名なミクソロジスト・南雲主于三氏がカクテルセッションを行った。
新型コロナウイルスによる影響は深刻さを増す。まず各社日ごろの営業活動に大きな制限がかかり、消費者向けの試飲機会も設けることができない。また、外食を控える動きが強まり、料飲店での実績に影を落とす。「居酒屋で、時間をかけて同僚や友人と飲む」、そんな場面が失われつつある。収束の見込みが立たず、どこまで影響が広がるかが読めない点が非常に心配される。国税庁は4月、飲食店が申請すれば酒類の販売免許(期限付き)を付与することを決めた。自宅での「オンライン飲み会」をする人も出てきている。こうした新たな動きに対応した施策を、いかに打ち出していけるか。業界全体として大きな正念場を迎えている。(大屋良太)