ドラッグストア特集
ドラッグストア特集:KSP-SP食品POS分析 食品流通で存在感増す
新型コロナウイルス対策としての外出自粛要請を受けて、食品の在宅消費は拡大が続いている。特に加工食品の販売が大きく伸びている。学校の休校が要請された2月24日週の加工食品の販売は、食品スーパー(SM)では前年比20%増だった。ドラッグストア(DgS)では、同45%増とさらに大きく上回っている。食品流通におけるDgSの存在感は、年々増してきている。
●食品販売拡大の3要因 店舗増・大型化・購買層変化
DgSの食品販売が拡大する要因は三つあると考えている。一つ目は、店舗数の増加である。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の推計では最近10年間で、1.3倍に増え、2万店を超えている。二つ目は、新規出店店舗が大型化していること。150坪(約500平方m)以上の店舗は、10年前に比べ5000店以上増え、約1.7倍となった(JACDS推計)。このため、小規模の店舗では扱いが限られていた食品などの購買頻度の高い商品の売場が増えている。三つ目は、購買層の変化が想定される。KSP-SPでは、DgSにおける食品の販売動向を確認するために、DgSでの食品データを収集し、提供を始めている。データの収集店舗は、比較的食品扱いの多い店舗を対象に全国で約380店舗の協力を得ている。19年9月から20年2月のデータを用いて、DgSの特徴を紹介する。
●加工食品の中心商品
食品の販売構成をSMと比べると、DgSでは加工食品の販売金額構成比が35.4%と、SMの53.8%と比べると少ない(図1、図3)。しかし、店舗面積が広くなることによって構成比は高まるため、今後増えると考えられる(図3)。
加工食品の中での販売構成は、パン・シリアル類、麺類、冷凍食品などが上位を占めている(図2)。いずれも前年同期の販売実績を上回っており、特に冷凍食品(前年比約7%増)、調理品(同)の伸びが大きい。あまり調理の手間のかからない時短型商品の割合が多いようだ。一方、調味料の中で大きなウエートを占める鍋つゆなどは、具材と合わせて買われることが多く、生鮮食品などの扱いが限られているDgSでは不利なようだ。小規模の店舗では鍋つゆの扱いは限られている。
主力な商品カテゴリーの特徴、動向を紹介する。パン・シリアル類、パンの中でも菓子パン、調理パンの構成が高く、合わせて72%となっている(SMでは60%)。シリアルは、フルーツグラノーラが定着しているが、コーンフレークに動きが見られる。特に、チョコレートが掛かったタイプなどおやつに近く、若年層に支持される商品が好調。
麺類では、カップ麺とインスタント袋麺が中心で麺類の78%を占める。SMでは生麺・ゆで麺が3割あるのに対して、DgSは14%にとどまっている。乾麺、スパゲティの構成比は低いものの、販売は拡大傾向。
冷凍食品では、即食性の高い冷凍麺類や冷凍米飯加工品の構成がSMに比べると若干高い(38%、SM31%)。麺類の動向と合わせると、調理済みのスパゲティや冷凍うどんがDgSではよく購入されているようだ。
調理品では、調理済みカレー(レトルトカレー)がカレールウ・カレー粉の2倍以上売れている。SMでは、カレールウ・カレー粉の方がわずかに多く、大きく比率が異なっている。また、カレールウでは、いくつかのブランドで中辛より甘口が売れる傾向がある。また、レトルトカレーでも、アンパンマンやプリキュアなどキャラクターのついた幼児用の少量タイプのランキングがSMに比べて上位にランキングされている。
このほか、かまぼこ(前年比16%増)、ちくわ(同8%増)、魚肉ソーセージ(同14%増)などが前年に比べ売上げを伸ばしている。かまぼこは、カニ風味かまぼこが市場の中心になっており、ちくわ、魚肉ソーセージとともに、サラダのトッピングやおつまみとして利用できる商品だ。
食品市場のトレンドは、和食より洋食を好む傾向(洋食化)、魚より肉食を好む傾向(肉食化)と簡便や時短を好む傾向(簡便志向)がある。
この三つに、健康志向を加えたものが大きなトレンドで、この上にさまざまなフレーバーの流行が加わって、その年のヒット商品が生まれてきている。DgSでの販売の特徴は、食のトレンドに合ったものの構成が高く、売上げを伸ばしているように思える。
●イメージと異なる来店客
DgSへの来店客というと、シニア層をイメージする方がいるかもしれない。また、繁華街のDgSへの来店客は、化粧品などを買う女性がイメージされる。しかし、これまでの販売傾向を見ると、それとは異なるようだ。
DgSによく行くようになるのは、どのような時だろうか。来店頻度が増えるきっかけを四つ想定してみた。一つ目は、就職や進学などで、化粧品の購買が増えるタイミング。繁華街のDgSのターゲットは、OLやサラリーマンになる。二つ目は育児用品の購買が増えるタイミング。DgSにとって、紙おむつや育児用ミルク、乳幼児用食品は重要な商品だ。三つ目は健康維持や美容関連の購買が増えるタイミング。40歳を過ぎると、老眼が気になるようになり、目に効果の期待されるサプリメントを手に取ることも増えるようだ。また、一般の健康診断から人間ドックに変わり、身体の変化を指摘されることも増えてくる。四つ目は調剤を含めて、医薬品関連の購買が増えるタイミング。通院をするようになると、薬をもらうことになる。ただし、調剤薬局併設のDgSでは、調剤スペースが仕切られていることが多い。また、入口付近にある調剤スペースと一番奥にある食品売場が離れていることも多いようだ。
これまで、紹介した売れ行きの良い商品と、DgS顧客のパターンを合わせると、二つ目に紹介した育児用品を買いに来る顧客がその後も、DgSへの来店を継続して、商品を購入していると考えるのがわかりやすい。甘口のカレーやチョコレートの掛かったコーンフレークなどは幼児の好む商品である。一方、減塩醤油などシニア向けの食品の割合はSMと大きく変わらなかった。
●商品回転の克服に課題
育児用品購入をきっかけに来店するようになった顧客も年とともに加齢してくる。子どもの年齢も同様だ。食のし好変化や生活関心の変化に対応できるだろうか。食品売場の中にヒントはないだろうか。昨年から、美容を訴求するビネガードリンクが好調だ。SM以上にDgSで大きく売上げを伸ばしている。自分用の美容や健康を保持する商品を見つけていく必要がある。
コロナ禍でのDgSの販売トレンドを見ると、販売が大きく上がった週の翌週に前年を下回ることがあった。小規模の店舗を中心に、納品や品出しなど遅延が懸念される。これまでの得意としてきたDgS商材とは異なる回転のスピードをどう克服するか。このような課題にも対応の検討が必要だ。(KSP-SP営業部専任部長・塚原新一)
◇店舗面積で異なる販売構成
ドラッグストア(DgS)は店舗面積によって商品の販売金額構成が変わることを理解しておきたい。そこで、店舗面積が500平方m未満の店舗を小型店、500平方m以上1500平方m未満の店舗を中型店、1500平方m以上の店舗を大型店と分けて、食品の販売構成を比較することにした。
今回の食品POS分析に使ったデータは、比較的食品の取り扱いの多い店舗を対象にしており、医薬品や化粧品が中心で食品の取り扱いが少ないDgSは含まれていない。
店舗の大きさによって、加工食品の販売構成比が変わってくることがわかる。店舗面積が増えるにしたがって加工食品の品揃えが充実している(図3、表)。
小型店では、加工食品の販売構成比は31.6%、「その他食品」の構成比が高い。加工食品の中でも、即食系のパン・シリアル類と麺類(特にカップ麺)に集中していることがわかる。なお、「その他食品」はサプリメント、健康食品や幼児用食品で構成されている。
中型店になると、加工食品の販売構成比が37.8%に増える。小型店に比べると、冷凍食品の構成比が高くなっている。調理済みの冷凍食品が中心で、家庭での消費がイメージされる。
さらに、大型店では、加工食品が42.0%を占めている。上位カテゴリーの構成比が全般に低くなっている。
つまり、品揃えが広くなり、さまざまな商品が売れている状況がうかがわれる。生鮮食品を扱う店舗もあり、調味料の構成が高まるのも特徴的だ。このように、店舗面積によって販売構成の違いがあり、中型店以上の増加はDgSの品揃えイメージが次第に変わってくるため、動向に注意する必要がある。(KSP-SP営業部専任部長・塚原新一)
●KSP-SP ドラッグストアPOSデータ
KSP-SPでは、従来から行っている食品スーパーPOSデータに加えて、ドラッグストアPOSデータの収集と提供を始めている。ドラッグストア(DgS)における食品販売動向を効率的に把握するために、食品扱い比率の高いDgS店舗からデータを収集している。また、データ検索、分析については従来からと同様のインターフェースで容易に使えるようになっている。全国で約380店舗。
現在、無料での試用も受け付けている。問い合わせは、日本食糧新聞社新製品事業部まで。