あの店この店味な店 プロの料理でカラオケ「やぐら茶屋」大和実業
バニーガールで知られた「エスカイヤクラブ」をはじめ、パブレストラン、居酒屋などを経営する大和実業(株)(本社・大阪、岡田一男社長)の直営店。東京エリアにおいては銀座、六本木、新宿など九店舗を出店しており、メトロ・エム後楽園店は昨年4月のオープン。
やぐら茶屋は、しゃぶしゃぶ、すき焼き、刺身、一品料理など日本料理を主体にした飲食両面のレストランで、全国にトータルで四〇店舗をチェーン化している。
この店はカラオケルームを併設しており、いわば複合タイプの店舗だ。店舗面積一二〇坪、客席はテーブル席、座敷合わせて一八〇席。カラオケルームは同じフロアでの展開だが、六人定員が七室、一〇人定員が二室あり、計六二人を収容できる。
やぐら茶屋のカラオケ併設店は、東京地区においては後楽園店ほか、新橋、神谷町の二店舗のみだが、店の規模と場所によっては積極的に出店していく考えだ。
「宴会客の場合は二次会はカラオケというのが当たり前になっておりますので、他店に移動しないでカラオケ利用ができるというのは、店の付加価値機能としてこれからは大事な要素になってくるのではないかと考えています。それに、カラオケは既存の厨房機能を活用して、プロの料理を提供することができますので、空間を移すだけで好みの料理を楽しむことができる。従来のカラオケ施設と違って、この点が大きな魅力じゃないでしょうか」(大和実業東京事務所)
この店の常品メニューは、焼き物、揚げ物三八〇~六八〇円、刺身、焼き物、揚げ物の盛り合わせ各一五〇〇円など定番約六〇品目。このほか、しゃぶしゃぶ食べ放題二八〇〇円、宴会メニューとして二〇〇〇円、二三〇〇円、二五〇〇円、三〇〇〇円などをラインアップしている。
消費低迷と低価格を反映して、メニュー単価は安くおさえている。客層はサラリーマンやOLなどが七割、残り三割がカップルや女性グループ、ファミリーなど、客層の幅は広い。客単価は三〇〇〇円で、一日当たり一五〇~二三〇人前後の客数がある。
単純に計算すれば、五〇~六〇万円をキープしていることになるが、会社が休みになる土・日は平日の半分以下の客数にダウンするので、この点が今後の大きな課題となっている。
カラオケルームはルームチャージのみで、時間内における歌い放題のシステムだ。店全体の営業はランチタイムが11時~14時、ティータイム14時~17時、夜間営業が17時~23時30分(無休)というシフトだが、カラオケは11時~17時までのデータイム、17時から23時30分までがナイトタイムだ。
料金システムは六人用ルームで、データイムが一時間利用の場合で一〇〇〇円、三〇分が五〇〇円、ナイトタイムはそれぞれが倍になるが、多人数で利用すれば安くなるというシステムだ。
この利用形態は店内からの流れが三割、外からのダイレクト利用が七割で、圧倒的に夜の利用が支配的だ。「ランチタイムのカラオケ利用を喚起していこうということで、しゃぶしゃぶとのセットで販促をかけたこともあったんですが、正直いって成果はいま一つという結果でした。やはり、カラオケの基本は夜の利用をどう高めるか、また、この施設機能を武器にして、どう宴会客を集客していくかということになるのだと思います」(やぐら茶屋メトロ・エム後楽園店、工藤学店長)
しかし、夜の利用客を増やしていくといっても、この店の場合は23時30分までの営業なので、深夜から朝方にかけての営業で客数を多く取るというわけにはいかない。通常の営業時間内でカラオケ併設の飲食施設として、どう補完し合い客数を伸ばし、客単価を引き上げていくかということにつきる。
その点については、カラオケは最近でも、一日二回転(約一〇〇人)の客数があるので、売上げに貢献する度合は大きい。客単価二〇〇〇円を乗じれば日商二〇万円のレベルはキープできるわけだ。
カラオケビジネスのメリットは基本的に“空間を売る”ことにあるので、従業員を張りつける接客サービスが不要ということだ。ルームからの料飲のオーダーはインターホンで受付けているので、専任のスタッフが一人いれば、十分に施設の機能を果たす。
つまり、極めて生産性が高いビジネスということだ。カラオケハードには当然のことながら最新の通信システム「GIGA」で、歌のソフトは五〇〇〇アイテム以上、また、そのつど新曲が入荷するという利点があり、この点がカラオケ(宴会)客の利用動機を喚起する仕掛けにもなる。
しかし、ハードに頼るだけでは他店との差別化はできない。過当競争が進行してきているカラオケ産業においては、清潔な環境、おいしい料理の提供、ホスピタリティのあるサービスこそが、競争に打ち勝ち、新たな市場を創造していけるといえるのだ。
「プロの料理とサービスが提供できるカラオケ施設の展開は、将来的には大きな可能性を秘めていると判断しています。宴会客を確保していく営業戦略においても、併設店をできるだけ増やしていきたいと考えています」(大和実業東京事務所)