地域ルポ 「原宿竹下通り」東京・渋谷区 縁日的雰囲気で人を呼ぶ

1995.09.18 85号 6面

JR山手線原宿駅の竹下口は、文字どおりに「原宿竹下通り商店街」(久世義昭会長)の入り口だ。明治通りまで、東西に伸びる長さ三〇〇mほどの狭い商店街で、縁日的な雰囲気が若者の来街動機を強く喚起している。とくに休日には中高生の来街が多く、レジャーランドの様相を呈する。また、5月、6月、10月、11月などの修学旅行シーズンには、地方からの若者も多く、東京ディズニーランドと並ぶ“観光名所”としての地域“ブランド”を確立している。通りへの来街者は一日約五万人。駅のホームからも人の流れがみえるが、日曜・祝日は路面いっぱいに人の波で、さながら神社境内の縁日といった趣だ。地域の商業集積は、ジーンズやTシャツなど軽衣料を主体に、雑貨、サービス、飲食など四五〇店を展開する。飲食はこのうち二、三割のウエートだが、場所柄ハンバーガーやクレープ、アイスクリーム、たこ焼き、牛丼といったFF系が中心で、単価の高い高級志向の店は少ない。

JR原宿は表参道口と竹下口の二つのエリアに分かれる。一日当たりの乗降者数は一三万人。

表参道には明治神宮や代々木競技場、NHK、原宿シャンゼリゼ通りなどに通じる。

竹下口は東西三〇〇mほどの狭い商店街を行くと明治通りにぶつかる。人の流れは表参道口に六割、竹下口に四割という比率で、平成元年から2年にかけての“タレントショップ”の出店ブーム時には一日平均一四万人もの人の流れがあった(JR原宿駅)。

現在はポストバブルの消費の低迷もあって、来街者が一割近く減少したということだが、しかし、それでも竹下口は平日の午後、休日は若者の来街で大賑わいの状況だ。

竹下口の改札口を出る。正面が即商店街の入り口だ。入り口の右角のビル一、二階に牛丼チェーンの吉野家が目に入る。

直営店で二年前のオープンだ。それまでは衣料品店だった。営業不振で徹退したので、代わって吉野家が出店したということだ。

一、二階合わせ店舗面積二五坪、一階一五席、二階二五席のコンパクトな店だが、地域では唯一の牛丼チェーンであるので、平日の昼夜は地域のサラリーマンや来街のヤング層、休日は学生、カップルなどが利用する。

月商一〇〇〇~一二〇〇万円。休日は会社が休みになるので、その分客数が二、三割くらいダウンする。

吉野家の場合は“目的志向”の利用形態であるので、若年層は吸引しにくいということのようだ。

同じビルの一階にドトールコーヒーが出店している。今年3月にオープンした新装店(FC店)だ。

吉野家の出店同様に衣料品店だったが、撤退したのでそこを借りての開業だ。

店舗面積一五坪、客席数二五席。オープンして間もないので、まだハッキリしたことはいえないが、目標数値の月商一〇〇〇万円前後はキープしている。

営業時間は朝7時から夜10時まで。もちろん、定休日なしのオペレーションだ。

商店街入り口の短いスロープを下ると左側、ビルの地下一階、地上一階にマクドナルドが出店している。

店舗面積五三坪、客席数二五一席。マックはハンバーガーチェーンとしてのストアイメージは絶大であるので、吸引力は大きく、途切れなく若者が利用している。

人気メニューはビッグマック三八〇円、てりやきバーガー二八〇円、フィレオフィッシュ二八〇円、マックフライポテトS一五〇円、マックシェイク二二〇円など。客単価は五〇〇~六〇〇円。

営業時間は朝7時から夜10時まで。売上げはテークアウトを含め、一日八〇~一〇〇万円前後。

ジーンズやTシャツ、アクセサリーといった間口の小さい店がフリーマーケットか、縁日的な雰囲気で軒を連ねている。

それらの店に狭まれて喫茶やラーメン、居酒屋などの飲食店も存在するが、数は少ない。

この界隈には四五〇店におよぶ店舗が集積しているが、飲食店舗は二、三割でしかない(竹下通り商店会)。

竹下通りは原宿駅の竹下口から明治通りに接する東西約三〇〇mほどの商店街だが、一本裏手の路地に入れば、古い民家やマンションが建ち並ぶ“住宅街”が展開する。

表通りの雑踏とは別に、落ち着きのある空間が広がり、そして、感性ゆたかなレストランや手づくりのケーキショップなどが点在する。

その象徴的なものが竹下通りから一本南に位置する“原宿ブラームスの小径”の「ルセーヌ館」だ。

「食と音楽とアート」をテーマに、ヨーロッパの優雅な建築美をイメージさせる建物(一~三号館、地上一~四階)に、ホールをはじめ、ロビー、サロン、ダイニングルーム、チャペルなどを展開する。会食やパーティー利用に、うってつけのレストランだ。

料理はフランス(一号館)とイタリア料理(二号館)。両者ともにランチ、ティー、ディナーの三シフトの運営形態を導入しており、ティータイムでも気軽に利用できる。

フレンチはランチ(三種)で二五〇〇円から。ディナーは七〇〇〇円から、イタリアンはランチ(パスタ料理)一八〇〇円、ディナーはコース料理が三八〇〇円から。

気品のある雰囲気で音楽と食事が楽しめる。地域のゲストハウスという趣である。

明治通り方向に前進する。右角の手前に森永ラブが目に入る。オープンは昭和52年4月。竹下通りにおいては、マクドナルドと並ぶハンバーガーチェーンだ。

ビルの一、二階での出店で、両フロア合わせ約七〇坪、一二〇席の店舗規模だ。

シャウエッセンチリバーガー二九〇円、ベーコンオムレツバーガー(フライポテトS、ドリンク付)五五〇円などが人気メニューで、マック同様に中高生などヤング層の来店が八、九割を占める。

客単価四三〇円、イートインが八割以上。客数は平日の利用を一とすれば、休日は三~四倍になる。月商二〇〇〇万円以上。

森永ラブの北側。明治通りに沿って、昭和50年ごろ地域最大の商業ビルおよびファッションビルとして名をあげた「パレフランス」が展開する。

地下一階、地上九階。かつては大人の“原宿ファッション”を象徴し、多くのパリコレのブティックやエージェントが入居していた。いまはその数は少ない。

このビルは地下一階に「味のトレボレ街」があって、パイレストランやイタリアンレストラン、スコッチパブなど一〇店ほどの飲食店舗が出店していた。現在は広島風お好み焼「もみじハウス」、ケーキ&ティールーム「ウエスト」、喫茶「水野」など数店が残っているに過ぎない。

街の雰囲気が大きく様変わったことで、高単価の店は退店してしまったということだが、以前一階のロイヤルホストが出店していたフロアに、今年3月、ファッショナブルなブラッスリー「オー・バカナル」がオープンした。

店舗面積二三〇坪、客席数二〇〇席以上の大型店で、通りに面してはカフェテラスもある。オシャレ感覚の店。地域の“アッパークラス”の客層にとっては朗報だろう。

通りの半ば辺りにクレープの店が三、四軒集中している。テークアウトオンリーのサテライト型の小さな店で、ハンバーガーレストランとともに、この通りのイメージに大きくフィットしている。

地域の老舗格の店は「マリオン」で、三坪のサテライト店に加え、二階に二五席の客席を有する。オープンは昭和53年。

商品はチョコレートクレープ五種(二五〇~三〇〇円)、チーズクレープ七種(二八〇~三三〇円)、カスタード七種(三〇〇~五八〇円)、ジャム四種(二三〇~五〇〇円)など。

このほかにはコーヒーやコーラ、ソーダ、ジュースなどのドリンク類(一〇〇~二〇〇円)も揃えている。

客層は圧倒的に若い女性やファミリー客で、休日は平日の二倍、三倍の客数アップになる。客単価三五〇~四〇〇円。

テークアウトオンリーで日商三〇万円前後。この店はFC展開もおこなっており、都内を主体に二〇店を開設している。三~四坪規模の店なら一〇〇〇万円で開業できる。

営業時間は朝10時から夜8時ごろまで。この通りの人の流れは7時ごろがピークになるので、閉店は早い。

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