総点検-激震下の外食産業 洋高・和低 外食の内外価格差
低価格戦略を価格破壊とも言うが、内外価格差の是正とも言う。徹底して低価格に取り組んでいるマクドナルドの藤田田社長は「今後、世界的に物価の平準化が行われるのではないか。例えば、日本のマクドナルドのハンバーガーは二一〇円。米国は八〇円、香港は六〇円である。日本の物価は三年から五年後、今の半分になるかも知れない。価格設定は世界価格を意識したい」(九四年2月)と語り、自らカテゴリーキラー宣言を行った。マクドナルドの今年合計八品目の単品値下げ、農林水産省の小売価格調査から内外価格差の実態をかいつまんでみたい。
欧米主要都市の食料品価格
東京と海外主要都市との内外価格差の実態を把握しようという「東京及び海外主要五都市における食料品及び外食の小売価格調査」(平成6年11月調査、農水省・食品流通局物価対策室、03・3591・6870)によると、外食では和食系は比較的安く、洋食系は高いことが明らかになった(表1)。しかし、これに東京の消費者物価指数ウエートで加重平均すると東京と海外五都市の価格水準はおおむね同水準となる。ただ、サービス形態、内容が異なることに留意しておきたい。
食料品の比較(表2)については各国固有の食習慣の違いなどにより、食料品の品質・規格・販売・消費形態が異なること、短期的な為替レートにより相対価格が変動すること、海外のサンプル数が限定されていること、生鮮食料品の供給は気象条件などに大きく影響されることから厳密な比較を行うことは困難であることに留意する必要がある。東京の消費者物価指数ウエートで加重平均すると、東京に比べて欧米主要都市の食料品の価格は七割程度の水準となり、前年と同じような水準である(表3)。
調査対象品目が各都市の一般小売店舗で販売している品目を対象としているために欧米型食生活用食料品が中心となっている。日本の消費者物価指数のウエートの三分の一を占める「日本食品」が含まれると内外価格差は縮まるものと思われる。
マクドナルドは今年4月から単品値下げを開始、10月16日のビッグマックの値下げでその数主力商品八品目、平均二五%の下げ率となっている。値下げ商品は4月にハンバーガー一三〇円(旧価格二一〇円、値下げ率三八%)、チーズバーガー一六〇円(同二四〇円、同三三%)、ダブルバーガー二四〇円(同三〇〇円、同二〇%)、ダブルチーズバーガー二七〇円(同三五〇円、同二三%)、7月にてりやきマックバーガー一九〇円(同二八〇円、同三三%)、フィレオフィッシュ二四〇円(同二八〇円、同一四%)、10月にビッグマック二八〇円(同三八〇円、同二六%)、チキンタツタ二八〇円(同三二〇円、同一三%)。
雑誌「エコノミスト」は世界六八ヵ国(九四年現在)で同一レシピで生産されているマクドナルドの「ビッグマック」の各国価格を比較して通貨の為替レートが適切かどうかを知るための大まかな手引きとして一九八六年から分析を行っている。それによると最安値は中国の一・〇三ドル、最高値はスイスの三・九六ドル(九四年)。
今回の改訂での各国比較は表4の通りである。来年発行のエコノミスト誌の日本通貨評価が気になるところだ。