地域ルポ 中野坂上(東京・中野区) 大型再開発で街に活気

1996.02.05 94号 18面

営団地下鉄丸ノ内線中野坂上。新宿から一つ目の駅。ここは東西を貫く青梅街道と南北方向の山手通りがクロスする交通の要でもあり、ここ数年来は住宅街が浸蝕されて、オフィスビルや雑居・飲食ビルなどが林立してきている。一日当たりの乗降者数四万一〇〇〇人。丸ノ内線沿線では平均より三割ほど多い利用者数だが、地域では大型の再開発事業や地下鉄一二号線の建設が進められてきており、これが完成する一、二年後には地域への来街人口は大幅に増加するものと予想される。このため、先行きの賑わいを見越して大手飲食ビジネスの進出も活発化してきている。

中野坂上は東京・中野区にあって、早くから山の手の住宅街として開けてきたところだ。

南北を貫く山手通りの東側は新宿区と渋谷区に接する。区の境界地に位置するということだが、このエリアは狭い。

東西を貫く青梅街道が街を南北に分断する形になり、商店は同街道に沿って軒を連ねている。

地番でみれば、中野坂上交差点から荻窪方向北側が中央一~三丁目、同南側が本町一~三丁目で、このエリアで世帯数約一万四九〇〇戸、人口約二万八〇〇〇人を数える。

中野区の人口動態は世帯数一五万一九〇〇戸、人口二九万五〇〇〇人(平成8年1月現在)であるので、中野坂上は世帯数で全中野区の約一%、人口で九%強のウエートを占めるという計算になる。

この数字が大きいのか、小さいのかは判断できないが、しかし、街中から低層住宅が減少してマンションやオフィス、雑居ビルが建ち並んできており、地域の人口は年々増加してきているという印象を受ける。

地下ホームから地上に出る。地下鉄の出入口は青梅街道沿いに二カ所あるが、北側出口は中央一、二丁目、南側は本町一、二丁目側に出る。

地上に出るとそこは即中野坂上交差点に接する。南側出口エリアではビル建設の真っ最中だ。工事の掲示板に「東京都市計画中野坂上本町二丁目地区第一種市街地再開発事業」(建設主/住宅・都市整備公団東京支社)とある。

敷地面積約四〇〇〇坪。ここに地上三〇階(地上高一三四m)、地下二階の高層オフィス棟「サンブライトツイン」ほか、地上一八階、地下二階の同「セントラルビル」、地上五階、地下一階「サンブライトアネックス」、地上九階、地下一階の住宅棟の四棟を建設する。

土地の高度利用、防火対策、住宅整備などを目的に推進している再開発事業で、平成5年2月から着工しており、平成8年9月末には完工する。

オフィス棟の地下や地上一、二階部分には飲食、物販など十数店を展開することになっており、これがオープンするとビル内の商業ゾーンとして大きく賑わうことになる。

山手通りを渡ってサンブライトツインの東側でも大型ビルの建設が進められている。

「中野坂上本町一丁目地区第一種市街地再開発事業」で、これは同地区の住民、商業地権者と民間企業が再開発組合(石森安英理事長)を設立しての再開発事業だ。

敷地面積約三五〇〇坪。平成6年3月からの着工で、地上二九階(高さ一二六m)、地下二階建てのオフィス棟「ハーモニスクエアタワー」ほか、地上六~一〇階、地下一~二階建ての中層賃貸オフィス二棟やマンションなど一棟を建設することになっている。

これらビル建設のうち、住宅棟は昨年末に完成しており、地権者などがすでに入居を開始している。

ハーモニスクエアタワーなど中核施設は平成9年3月末には完成する予定だが、地下フロアや地上低層部分にはサンブライトツイン同様に店舗が入居することになっており、オープン後は地域住民や来街者の利便性を高めることになる。

地域の飲食店舗は、主として中野坂上交差点から西側の青梅街道沿いに展開する。山手通りにも点在するが、この数は少ない。

青梅街道沿いにはファーストキッチン、茶月、養老の瀧など大手飲食チェーンに加え、ステーキ&ハンバーグ「てっぺい」、「カフェドエル」、皿ずし「喜太呂」、インド料理「シュンドルボン」といった個店経営の店が展開する。

ファーストキッチンは中央一丁目側地下鉄出入口の左隣ビル一、二階に位置しており、平成4年3月に開店。一、二階合わせ店舗面積六〇坪、客席数一〇〇席の中型店で、月商一〇〇〇万円を確保している。

営業時間は午前7時30分~午後11時。貢献度の高いメニューはベーコンエッグバーガー二九〇円、フライドチキン一八〇円(一ピース)、ピザ三種各三九〇円などで、客単価は五〇〇~六〇〇円。

客層は朝、日中がサラリーマン、夕方は主婦が主体になるが、都心の出店と異なって一〇代の学生層はほとんど来店しない。地域に中・高校、短大などが多くあるが、学校側が下校時の飲食行動を禁じているので、来店につながらないというのがその理由だ(ファーストキッチン中野坂上店)。

ファーストキッチンから西側へ一〇〇m。持ち帰りずし「茶月」が出店。ビルの一階。店舗面積約一〇坪、一〇年前のオープン。

営業時間午前10時~午後9時。客層は主婦、OL、サラリーマンなど。客単価六〇〇円前後、売上げは月商五〇〇~六〇〇万円(推計)といったところだ。

居酒屋チェーン「養老の瀧」は、本町側青梅街道沿いのビルの二階。平成6年12月の開業で、「ND方式」によるFC店だ。

店舗面積三五坪、客席数八五席。営業時間は午後5時~深夜の12時。大エビ二五〇円、大エビフライ三〇〇円、カレイ唐揚四〇〇円、エビチリソース四五〇円、お徳串焼盛り合わせ一三〇〇円、ツナサラダ三八〇円などが人気メニュー。

客層は平日が周辺のサラリーマン、土・日は地域のファミリー客が主体。

客単価二〇〇〇円前後。オープンして二年目。集客力はまだ十分でないが、一日三回転前後、月商八〇〇~一〇〇〇万円(推計)といった営業状況だ。

養老の瀧が出店する同じビル。一階に皿ずし「喜太呂」、三階にインド料理の店「シュンドルボン」。

両店ともにここ一年以内のオープンで、「喜太呂」は一皿一〇〇~五〇〇円の新鮮な素材の江戸前すし、「シュンドルボン」はインド人のコックで、バイキング方式の食べ放題一〇〇〇円を売りものに集客力を高めている。

中野坂上交差点方向へ戻る。

「カフェドエル」。皿ずし喜太呂から三〇mのところ。ビル一階。シックな茶色のレンガスタイル。外装が独立店舗風でアットホームな雰囲気が漂っている。

オープンして一八年。店舗面積一〇坪、客席はカウンター、テーブル席合わせて二〇席ほど。

コンパクトな造りだが、サイフォンコーヒー(四〇〇~四五〇円)が看板商品で、地域住民の憩いの場として賑わっている。

平日のみの営業で朝9時から夜7時まで。オーナー経営の店なので欲張らない。固定客八割。売上げは月商三〇〇万円前後といったところ。

カフェドエルからさらに交差点寄り。歩道橋のそばにステーキとハンバーグの店「てっぺい」が出店している。同じく個人経営の店。一三年前の開業。店舗面積六坪、客席はカウンターのみ一二席。

夕方6時から午前1時までの営業。アメリカンステーキ(一三〇g)一〇五〇円、ヤングステーキ(一八〇g)一四五〇円、ハンバーグステーキ(ジャンボ四五〇g)一一〇〇円など定食(ライス・サラダ・スープ付き)ほか、サラダ、アルコールのつまみ類を提供。

客層はサラリーマンや学生、カップルなど。客単価は一五〇〇~二〇〇〇円前後。

中野坂上交差点から山手通りを東中野方面へ二〇mほど先。ビル一階、ハンバーガーチェーンの「モスバーガー」が出店。

昨年10月にオープンしたばかりの新装店だ。FC店で店舗面積二〇坪、客席数三七席。朝9時から翌朝1時までの営業。

若いサラリーマン、OL、主婦などが主力客層で、客単価六〇〇円。月商一〇〇〇万円前後。テリヤキバーガー二九〇円、チキンバーガー二七〇円、モスバーガー二八〇円が人気商品。

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