話題の飲食施設 フードギャラリー「日吉東急百貨店」 低価格・快適・気軽が売り
地上五階、地下二階建て、総延床面積約一万二〇〇〇坪。平成7年11月、東急東横線日吉に「日吉東急百貨店」がオープンした。平成元年3月から東京急行電鉄が東横線の複々線工事に伴う日吉駅舎の改良工事をはじめ、駅上部利用計画の一環として駅ビルの建設計画に着手、その完成と同時に開店したもので、食料、衣料、寝装品・カーテン・ファッション雑貨、化粧品、カバン・旅行品など七売場と飲食一六店、物販一店、サービス三店など計二〇店舗が展開している。初年度売上げは一三五億円を目標としている。まだオープンしたばかりだが、年末・年始の販促キャンペーンもあって売上げは順調に推移、また消費者の反応も思惑どおりで、目標は十分にクリアできるとみている(日吉東急百貨店販売促進部)。
日吉は横浜市の北部(港北区)にあって、東京・渋谷からは急行で二〇分の時間距離。
東京のベッドタウンという性格にあるが、街は東側に慶応大学の日吉キャンパス、西側に駅前商店街と住宅街が展開する。
商店街は狭隘だが、「日吉中央通り」を軸に北側に「浜銀通り」と「サンロード商店街」、南側に「普通部通り」の四つの通りが延びる。
商店街の奥行は一五〇mくらい。段丘のある住宅街が展開するので、面としての拡がりには限界がある。しかし、これは日吉東急百貨店が、設定しているものだが、商圏人口は第一次商圏(三キロメートル)で三九万人、第二次商圏(四キロメートル)六三万人と大きい。地域の小売店舗数約四〇〇店(うち飲食店三割)。
街の規模としては小さいが、商業集積においては東急東横線沿線でも有数の集積度にある。
だが、地域および沿線の消費マインドが大きいものの大型商業施設がなく、この点では日吉は街の魅力に乏しかった。
このため、地域住宅のショッピングの楽しさや賑わいを求めての消費行動は、渋谷や横浜など地域外に求めるという状況にあった。
日吉東急百貨店のオープンはこれらの課題を解決するものだが、しかし、施設規模が都心の百貨店と比べてはるかに小さいことから、思惑どおりに吸引力を発揮できるかどうかは不明だ。
衣食住の生活関連商品の品揃えを主体に、利便性、快適さ、楽しさのフロアコンセプト。
客層は「若々しい感性と快適な生活を志向するミセス」を主力ターゲットに一〇、二〇代のヤング層をサブターゲットにしている。初年度年間売上げ目標は一三五億円。
日吉東急百貨店の飲食施設は別掲のとおりで、喫茶、スナック、和・洋・中、すし、エスニック、ドリンクバーなど一六店を展開する。
施設内の飲食店舗では地域最大の規模だ。この中にあって、南館三階のフリーフローレストラン「フードギャラリー」は、ワンフロアに八店舗を展開しており、低価格志向に加え利便性と気軽さが独自の集客力を発揮している。
同飲食施設は店舗面積約四〇〇坪、客席数三五〇席のスケールで、和・洋・中とインド料理など七店、バー・ドリンクコーナー一店の計八店を展開する。
このタイプの飲食施設はショッピングセンターや量販店において、「フードコート」と称してハンバーガーやラーメンなどFF系のレストランサービスが主流だが、フードギャラリーの場合は喫茶・軽食、アルコール、ディナーメニューとひと通りのものを揃え、広角度の飲食ニーズに対応している。
ギャラリーは入り口からみて左手に洋食「クレソン」、中国料理「チャイナガーデン」、和食「天久」。
右手はステーキ「グリルファームヤード」、スパゲティ・ピザ「パスタコ」、インド料理「アクバル」、すし「魚がし中与」。
入り口寄りのホール中央部分には、ビバレッジコーナー「ドリンク・バー」を展開する。単品単価二〇〇~一〇〇〇円以内。客単価八五〇円。
フロアレイアウトはゆったりと明るい。各コーナーの前面にカウンターレーンがあり、客はトレイを移動させながら好みの料理をチョイスし、好きな席で食べる。料金の支払いはコーナーごとにおこなう。
大型のオフィスビルや都市ビルで目にする大食堂の「キャフェテリア方式」ということだが、食後のあとかたづけは従業員がおこなう。
メニューはフードメニューとドリンク(アルコール)メニューを合わせ計二六〇品目。
パーティルームもあり、利用金額は三〇〇〇円以上、二〇‐五〇人、午後6時30分から二時間以内のシステムで、会社、女性、学生グループの利用も多く、地域のコミュニティスペースとしての利便性も発揮している。
初年度年間売上げ目標六億円。オープン当初は日曜日で一〇回転(三六〇〇人前後)の実績もあったが、現在は平日で三、四回転、日曜(休日)で六、七回転に落ち着いている。
◇洋食「クレソン」=ビーフカレー六八〇円、ハンバーグランチ八〇〇円、オムレツ五〇〇円~
◇中国料理「チャイナガーデン」=チャーシュー麺六五〇円、チャイナ弁当九八〇円、点心三八〇円~
◇和食「天久」=天ざる・そば九五〇円、羽衣弁当一二〇〇円、天丼七八〇円
◇ステーキ「グリルファームヤード」=サーロインステーキ一二〇〇円~、ハンバーグステーキ九〇〇円、サービスランチ九五〇円
◇スパゲティ・ピザ「パスタコ」=ピザ七〇〇円~、スパゲティ六〇〇円~、サラダ二〇〇円~
◇インド料理「アクバル」=カレー六〇〇円~、タンドリーチキン四五〇円(二個)、ナン一八〇円
◇すし「魚がし・中与」=にぎりずし五〇〇~二〇〇〇円~、ちらしずし六〇〇円~、刺身三八〇円~
◇ドリンクコーナー「ドリンク・バー」=コーヒー・ジュース二〇〇円、生ビール(中)四五〇円、カクテル三八〇円
・本館一階(一店)「デリコートサンジェルマン」
・本館二階(一店)喫茶「カフェサンジェルマン」
・本館三階(一店)甘味処「豆蔵」
・南館二階(三店)喫茶「カフェ・キュート」、実演手打うどん「杵屋」、スパゲティ・ドリア「イルプリモ」
・南館三階(九店)地中海料理「ラ・ピアッツァ」、フリーフローレストラン、「フードギャラリー」(和食/天久、洋食/クレソン、中国料理/チャイナガーデン、インド料理/アクバル、スパゲティ・ピザ/パスタコ、ステーキ/グリルファームヤード、すし/魚がし中与、飲みものコーナー/ドリンク・バー)
日吉東急百貨店概要
・開業日/平成7年11月9日
・所在地/横浜市港北区日吉二‐一‐一
・電話/045・560・1511(代表)
・店長/米本三男(取締役)
・施設構成/地上五階、地下二階、総延床面積一万一六五四坪、売場面積本館四〇〇〇坪、南館八四八坪
・フロア構成/本館地下一階=ジーンズショップ、クリーニング、サービスショップ、一階=食料品、ディリーマート、飲食、喫茶、二階=婦人服、洋品、化粧品、ファッション雑貨・小物、飲食、喫茶、三階=紳士服・洋品雑貨、子供服・洋品雑貨、家庭・日用・趣味雑貨、ソフトインテリア、喫茶、四階=駐車場、RF=駐車場、南館二階=書店、レコード、飲食店、三階=フードギャラリー、四階=駐車場、RF=駐車場、三~四階=アトリウム
・営業時間/本館一〇時~二〇時、南館二階一〇時~二一時、同三階一〇時~二二時
・定休日/木曜日
・初年度売上げ目標/一三五億円