飲食店成功の知恵(83)繁盛編 効果的な広告・宣伝の仕方

1996.03.04 96号 22面

最近は、駅前や商店街、目抜き通りなどでのティッシュ配りをよく見かけるようになった。大きな繁華街などでは、日常茶飯事になってしまっている。チラシの手配りも当たり前の光景になっている。ただ、一般にこういう販促活動を積極的に行っているのは、概ね中・大型店、あるいはチェーン店などである。小規模店にももっと頑張ってほしいと、常々思っている。

ところで、ティッシュやチラシの手配りが盛んになったのはなぜなのか。成功=繁盛をめざすのなら一度、このことを考えてみる必要がある。

ひと昔前までは、いいお店だとお客のほうで宣伝してくれたものだった。別に頼んでいるわけではない。お客が自発的に宣伝してくれたのである。何度か利用して気に入ると、友人や知人に「あの店を知ってる?」と、どんどん評判を広げてくれた。だから、お店のほうは、とくに広告や宣伝を打つ必要がなかった。一生懸命にお客に尽くしてさえいれば、それだけで繁盛できたのである。

しかし、いまはそんなわけにはいかない。時代は変わった。何がいちばん変わったのかというと、クチコミの効果である。かつては宣伝効果抜群だったのだが、いまやあまり期待できなくなってしまっている。

どうしてそんなことになってしまったのか。大きな理由として、二つ考えられる。ひとつは、飲食店の数があまりに増え過ぎてしまったことである。これだけいろいろなお店がひしめいていれば、お客が目移りするのも当然だろう。これもいいけど、あれもいい。というわけで、ひとつのお店にこだわるということが、なかなかできなくなってしまったのだろう。

二つ目の理由は、お客が外食に慣れた、ということである。昔は飲食店に行くこと自体が不慣れだったから、友人・知人からのクチコミは、貴重な情報源として機能していた。ところが、外食に慣れたいまのお客は、自分の価値観でお店を選ぶ、という意識が非常に強くなっているのだ。

こういう時代にお客に選ばれるお店になるためには、ただお店を開いて待っているだけではダメだ。こちらからお客に向かって、打って出ていかなくてはならない。小規模店であっても、いや、小規模店だからこそ、お客の目に耳に直接アピールする宣伝が必要なのである。ティッシュやチラシの手配り、あるいは住宅地での各家庭のポストへの配布などは、別に大手だけの専売特許ではないのだ。

ただ、たんに手配りすればいい、というものではない。ここが大事なところである。もっとも直接的に、消費者に食い込むような、強烈なアピールが必要なのだ。

たとえば、近所に事業所がたくさんあるのなら、メニュー表とサービス券を持参して、シラミつぶしにあいさつに回る。商店街の物販店を回ってもいい。

地域で目立つことも大事な戦術である。たとえば、町内の催し物や地元の神社のお祭りなどには、必ず寄付をする。寄付をするとお店の名前が書き出されるが、あれは意外とたくさんの人が見ていて覚えているものだ。

また、地域のサークル活動などに貢献するのも、大きな宣伝効果になる。たとえば、どこの町でもたいていあるのは、ママさんバレーとか趣味の会だが、こういう集まりは、主婦層が中心になっているものが多い。そこでそういう集まりを開きやすいように、何かサービスをつけたりしていろいろと便宜を図るのだ。これはじつは、地域密着型営業の基本的な戦術なのだが、効果たるや抜群である。

とにかく、小規模店はゲリラ戦法に徹することが大切である。

フードサービスコンサルタントグループ

チーフコンサルタント 宇井 義行

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