2021年4月度、外食動向調査 フードコンサルティング
●昨年の反動で異常値オンパレード
思い返せば、昨年4~5月にかけては、外食産業の歴史に残る「ブラックアウト(灯火管制)」とも呼ぶべき異常な期間であった。緊急事態宣言は事実上の外出禁止令としてとらえられ、多くの飲食店が休業や廃業を余儀なくされたのは記憶に新しい。
この異常値との比較なので、今回の4月度は相当な混乱が生じると当初より覚悟はしていたが、蓋を開けてみると、混乱など甘い言葉が吹き飛ぶような、まさに「異常値」続出の状況となった。
もし仮に、昨年の状況を知らないまま「前年比売上げ1000%」などと書いてあるのをご覧になった人がいるとすると、おそらく「これエクセルの計算式が違ってるだろ」とか、「1桁入力を間違えたな」などの反応になるはずだ。
ところが、この「前年比1000%超え」があったのだ。それも2企業、一家ダイニング(1007.9%)とひらまつ(1074.7%)である。これに続くかのように、鳥貴族(948.7%)、きちり(732.4%)、ダイヤモンドダイニング(671.1%)、さかな市場(580.6%)、とりかく(537.3%)、梅の花(491.9%)、MOMI&&TOY(488%)、サンマルク(466.1%)、大庄(460.5%)、東和フード(449%)、グローバルダイニング(347.5%)、焼肉きんぐ(316.9%)など、主にアルコール提供業態が中心だが、老舗チェーンから新興勢力まで幅広く記録を更新している。
もちろん、昨年が昨年なだけに瞬間風速的な一過性の数値となるはずだが、上場企業だけに一時的でも株価上昇につながった企業もあった。
●19年度比マイナス続く
その一方で、昨年の異常値を除いた2019年度ベースの平常値で比較してみる。
居酒屋業態はいまだ7割以上のマイナス、ディナー業態でも5割以上のマイナス、ファミレス業態も洋風、和風とも3割以上のマイナス、コロナ禍でも堅調が続いている回転寿司業態でも5%台のマイナスとなるなど、やはり実態はまだまだ回復軌道には乗っていないことが分かる。
●気になる社長交代
コロナ感染者数と東京オリンピック・パラリンピック開催の可否にすべての注目が注がれているためか、コロナ禍でなければ日経新聞でもビッグニュースとなっていたはずの社長交代リリースが3社、やや控えめに発表された。その3社とは、うかいの大江原正伸社長、クリエイトレストランツの岡本晴彦社長、アークランドサービスの臼井健一郎社長のお三方である。いずれも業界的に知名度が高く、経営者として10年以上の実績を上げている。特にクリエイト岡本社長とアークランドサービス臼井社長は、いずれも事実上の創業者とも言うべき大きな存在感を放っていた。
厳しいコロナ禍が続く中で、3社の置かれた状況が異なるため、退任の事情もそれぞれのようだ。「かつや」のアークランドサービスはコロナの影響が軽く業績も堅調、うかいは昨年後半から徐々に回復傾向にあるが、クリエイトレストランツは一昨年まで買収を繰り返した結果、収益力が低下し財務的にも余裕がなくなっていた中でのコロナ直撃を受け、業績が急激に悪化していた。
この状況から推察すると、社長交代の理由で最も多い業績悪化による引責辞任はクリエイト岡本社長だけであり、ほか2社は別な理由があるようだ。
ここから先は筆者が耳にした業界の噂なのだが、うかい大江原社長の場合は、創業家の事業承継絡みの引退、クリエイト岡本社長は、業績悪化に加え事実上のオーナー会長との確執が取り沙汰され、アークランドサービス臼井社長は、ご自身が親会社オーナーの娘婿でもあることから、家族(夫婦)関係が原因との情報も出回っているようだ。いずれも新体制の下で、まだ当面続くであろうコロナの影響を凌いでほしいものである。