宅配事業に新たな活路 「ピザ・ウィリー」の場合
「ピザ・ウィリー」も複合化への取り組みを始めた。地方出店や既存飲食店との複合化を狙って、店舗規模を従来の半分に押さえた「ウィリーJr」なる展開パターンを作成、4月からFC募集している。初期投資は約一二〇〇万円、月商は三〇〇~四〇〇万円、損益分岐点は二七五万円に設定。固い利益を要望する声に応えている。
もとよりデリバリーピザは商圏の取り方が命だが、不利な立地でも加盟を希望するオーナーが多い。また、既存店においても、商圏外からのオーダーが相次ぐため、繁盛日時に出帳、中継販売できるシステムの要望があった。これが複合化路戦の発端だ。
例えば「ピザ・ウィリー所沢店」のオーナーは、同時に別の場所で弁当屋を展開しているが、弁当屋が展開不能であることと、その地域でも少なからずデリバリーピザのニーズがあることから「ウィリーJr」との複合化を思い立った。
最近その地域では、大型店の進出が激しく近隣の飲食店のほとんどが撤退を強いられたが、同店だけは、「ウィリーJr」との複合化で生き延びたという。また、「ウィリー所沢店」に続く商圏の拡大にはずみがついてスケールメリットも手中にしたわけだ。
さまざまなもくろみでデリバリーの複合化が加速するのは必至だ。だが、複合化は商品力がなくて売れないから、また立地戦略を失敗したことをカバーするための苦肉の策と受け止められて既存の専門的なイメージが色あせるリスクもはらんでいる。アルバイトの作業マニュアルを乱す恐れもある。事実、そうした要因で複合化に失敗したケースは数多い。
それらに共通することは、チラシ、電話、従業員などすべてに共有化を図るなど、合理化に走り過ぎてデリバリー業態の基本コンセプトを忘れていることだ。ユーザーの手もとに届いた時にメニューを最良状態(おいしく)にする工場的な発想、またそれを専門化してこそデリバリー業態は成り立つ。そのシステムを忘れた“届ける”は、ただの出前にほかならない。
デリバリーの複合化にはメリットもあるが、裏に潜むそうした危険性を知っておく必要もあるだろう。