メニュートレンド:中華カレーの新境地 中華スパイスだけで表現
欧風カレーや和風カレーと多様化が進むカレー。だが、ありそうであまり目にしないのが「中華風カレー」だ。東京・新宿の「グリルアンドバー ハナヤ」は、中華“風”どころか、中国料理に使うスパイスだけでカレーを成立させるという離れわざでカレーファンの注目を集めている。
●塊の豚角煮も魅力
独特な黒い色合いのカレールウ、それに包み込まれる豚角煮の大きな肉塊というビジュアルのインパクトもさることながら、味や風味もユニークそのもの。「初めてのお客さまは全員が“今まで食べたことがない味”と言いますね」と石川寿栄男シェフは笑みを浮かべる。そんな書き出しをすると味に疑問を感じる読者もいるだろうが、某国民的アイドルの冠テレビ番組で企画された名店のカレー対決では、唯一満点で優勝を勝ち取ったこともあるほどで、実力はお墨付きだ。
さて、何も考えずに口に入れたときの第一印象は疑うことなくカレーの味…のはず。だが、よ~く味わってみるとチリペッパーらしい辛さも、クミンなどカレーらしさを演出する香りも感じられない。中華カレーというコンセプトのとおり、五香粉や八角といった15種を超える中華スパイスを配合して生まれた辛さや香りなのだ。
同品が開発されたのは実に20年前にさかのぼる。「岡山で中華料理店を営みながら、趣味でスパイスを調合してカレーを作るのを楽しんでいました。ある時、中華料理で使うスパイスだけでも調合次第でカレーの味になるのではとひらめいたんです」と石川シェフはきっかけを語る。
インドと中国両方のスパイスに精通していたため、調合そのものに苦労はなかったそうだ。スパイスを焦げる直前までしっかりと炒めてからスープを加えるのが、調理のポイントだが、これが風味に加えてルウが深いブラック色に仕上がる秘訣でもある。
豚角煮は200gの豚ばらブロックを3時間かけて軟らかく煮込むが、八角の香りを強調させてカレーとの相性を高めている。
2021年3月には、東京・吉祥寺にオープンした「チーナテリア ハナヤ 吉祥寺」をプロデュースするなど業界の注目度も急上昇。「中華カレー」がカレーの新ジャンルとして確立する日も遠くなさそうだ。
●店舗情報
「グリルアンドバー ハナヤ」
所在地=東京都新宿区歌舞伎町2-45-4 若月ビル地下1階/開業=2017年3月/坪数・席数=17坪・21席/営業時間=11時30分~15時、18時~翌1時。不定休/平均客単価=昼1100円、夜3000円
●愛用食材・資材
「GABAN ウーシャンスパイスパウダー」ギャバン(東京都中央区)
中華スパイスの代表格
別名「五香粉」とも呼ばれ、スターアニス、山椒、シナモン、ミカンの皮(陳皮)、クローブの5つのスパイスをブレンドした中国の代表的なミックススパイス。同店ではベースとなるカレールウのほか、台湾カツカレーにのせるパイコーの下味としても使用している。
規格=65g、150g、300gほか
【写真説明】
写真1:「他の中華料理のカレーも食べたい」というリクエストも増加し、ほかに「海老キーマカレー」(1,000円)、「台湾カツカレー」(1,300円)、「蟹キーマカレー」(1,500円)と5品までメニューを増やしている