Interview:「ラーメンは日本だ」 石破茂会長が語る「ラーメン議連」が果たす役割
「ラーメンは日本だ」–。そう言い切るのは石破茂衆議院議員だ。自民党有志議員を中心とした「ラーメン文化振興議員連盟」(以下、ラーメン議連)がこのほど設立され、ラーメンに強い思い入れを持つ石破衆議院議員が会長に就任した。ラーメン議連は全国各地のご当地ラーメンを振興し、地方創生につなげるとともに、日本発のラーメンを中心とした日本の食文化を国内外に広く発信することを目的にしている。同時に、ラーメンから浮き彫りになる日本の食と農の未来を考え、取り組みを拡大する方針だ。ラーメン議連の活動と果たす役割について、石破会長に話を聞いた。
●ラーメン議連設立の狙い
ラーメン議連を結成した目的は大きく二つあり、その一つは「地方創生」。ラーメンは日本で独自の進化を遂げた。日本各地には、風土や産業、歴史と結びついた特色豊かなご当地ラーメンが数多くある。例えば、兵庫県西脇市の播州ラーメンは日本一甘いといわれているが、この地は戦前から繊維産業が盛んだったことが背景にある。かつて織物工場で働いていた女性たちが甘めのラーメンを好んだため、野菜の甘さを生かした播州ラーメンが作られるようになった。日本のラーメンにはストーリー性があり、それぞれに独自の食文化を形成している。こうした特色のあるラーメンの魅力を国内外に発信し、世界中から人を集めることで、地方の活性化を図りたい。
もう一つの目的は、ラーメンを通じて日本の食料問題を改めて提起することにある。ラーメンは日本の国民食でありながらも使用食材の自給率は低く、12%程度と推定されている。麺の小麦、スープに使われる醤油の大豆は、ほぼ外国産。チャーシューの豚肉は国内産だが、豚の飼料は外国から仕入れている。純国産はモヤシとネギぐらいで、国民食といわれていながらもこの状況だ。ラーメンを通じて多くの国民が日本の食料自給率を意識し、ひいては食料生産問題全般と向き合うことにつなげていく。そんな役割を果たしたい、と考えている。
●ラーメンの魅力
私はカレー通を自認しているが実はラーメンも好物で、私の人生の風景にはいつもラーメンがあった。幼稚園時代、小学校時代に食べていたインスタント麺や、高校時代には学校近くの中華料理店で毎日のように食べた130円のタンメンが忘れがたい。銀行員時代は、終電の仕事帰りに最寄り駅で食べる屋台のラーメンに、“昭和の働くサラリーマン”としての晴れがましさを感じた。
ラーメンは日本が誇る国民食だ。カレーも国民食だが、例えるならカレーは「文化サークル系」で、ラーメンは「体育会系」。カレーはどちらかというと内省的なイメージなのに対して、ラーメンは「食べ歩く」「店の全国展開を目指す」といった体育会系の雰囲気がある。日本が今、失いつつある体育会的なバイタリティーと楽しさを、ラーメンはまだ持っている。
ラーメンほど、国民みんなに愛されているグルメはあまりない。もちろん寿司、天ぷらも愛されているが、1000円程度の価格でいつでも誰でも食べに行くことができ、家庭でも手軽に作れる。各地域ごとに特徴的なご当地ラーメンには何度も食べに足を運びたくさせる力がある。こうした魅力は、ラーメンならではだろう。
●今後の活動の展望
ラーメン業界が抱えている問題は、コロナ下によるラーメン店の厳しい経営事情、小麦価格の上昇など数多くある。そうした難題の解決に向けて政策を検討し、中央省庁に働きかけるのが議員連盟の使命だ。ラーメン議連では今後、食材メーカーや卸企業、外食事業者らと連携を取り、政治行政に反映させていこうという展望を持っている。
また、今後の日本のあり方を考えるのに、誰もが大好きなラーメンはひとつの象徴的な事例となり得る。例えば、前述したラーメンの自給率12%という数字を見て、どうしたらこの数字を引き上げられるか。そのためには、食料の国内自給体制をどう高めていくべきか。
自給率100%のラーメンを目指すのなら、当然、その付加価値に見合う対価を支払わなくてはならないだろう。消費者も「高いけど安心な商品」「よいものは高くて当たり前」といった価値観へ意識改革する必要が生じる。
ラーメンを通じて、そんな日本の現実が見えてくるはずだ。言うなれば、ラーメンはまさに「日本国」そのもの。日本が誇るラーメンの魅力で地方ににぎわいを戻し、誰もが大好きなラーメンを通じて日本の食料生産はどうするべきか、エネルギーはどうあるべきかを問題提起する。ラーメン議連は、そうした取り組みを拡大していく。
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