メニュートレンド:主役はご飯 ステーキは脇役
ハンバーグとご飯だけを提供する業態がブームになったが、実はそれ以前から肉&白飯のワンメニューのみで展開しているのが「コメトステーキ」だ。1ポンドステーキを驚きの安価で提供しているが、同店のウリはそこではない。「うちはステーキ屋ではなくご飯屋」と言い切る、おいしいご飯のためのステーキ店なのだ。
●硬い肉はのどごしで味わう!
「コメトステーキ」は店主の大曽根克治氏が家業の米穀店を閉め、新たに開業。米屋からの転身ゆえ、主役はステーキではなく“ご飯”という異色の店だ。白飯を引き立てる“脇役”としてステーキに着目したのは「ラーメン凛 砂町店」店主からのアドバイスで、「アメリカでよくある、ステーキを安価で出す店にしてはどうか、と。米屋の強みを生かしてご飯と合わせて。ご飯とステーキはよく合うし、なるほどと思いましたね」。大曽根店主はそれまで飲食店の経験はなかったが、「ステーキなら焼く技術さえ修得すればイケる。1オペなのでメニューも思い切って1品に絞り込み、付け合わせもシンプルにモヤシ炒めだけにした」と言う。
そして、「うちはご飯屋」と主張するだけに、ご飯の炊き方にはとことんこだわっている。会津産コシヒカリを使用し、コメも水も電子はかりで1g単位で分量を計測。甘味が出るようにコメは丸一日、冷蔵庫内で水に浸してから、保温で味が落ちないよう1升サイズの炊飯器で一日に何度もこまめに炊飯している。
ご飯にばかり熱を込めているようで、実はステーキも侮れない。「ステーキを食べるなら、やっぱり大判の肉を豪快に食べたい」(大曽根店主)と、US牛の肩ロース肉をボリューム満点の1ポンド(450g)使用。1ポンドステーキ1800円は驚きの安さだが、「でも、うちのステーキははっきり言って硬い。覚悟してください(笑)」(同)。軟らかくぜいたくなサーロインステーキとはまた違う、“食いちぎる”ようなステーキの楽しみ方も知ってほしい、として「小さく切り分けて力強く噛みしめ、豪快に飲み込む。うちのステーキはのどごしで味わって」と言う。
ワンメニュー、駅から15分以上離れた住宅地の立地という条件ながらも、毎日行列ができる同店の成功事例は、“ワンメニューだけで勝負する専門店”業態の大きな可能性を感じさせる。
●店舗情報
「コメトステーキ」
所在地=東京都江戸川区松島3-34-13/開業=2019年12月/席数=10席/営業時間=11時30分~14時、18時~22時(売り切れ終了)。日曜休(営業時間など変更はSNSで告知)
●愛用食材・資材
「ブラックペッパー(あらびき)」エスビー食品(東京都中央区)
ステーキの力強さを引き立てる
ステーキの下味に使用。飲食店で別メーカーのブラックペッパーをよく見かけていたことから「ほかの店と同じだとつまらないな、と思って選んでみたら、お肉に合うよい味だった。香りもいいし、ステーキの力強い味を引き立ててくれます。使いやすいですよ」と大曽根店主は言う。
規格=370g
【写真説明】
写真1:450gのステーキに、炒めたモヤシ、ニンニク、青唐辛子の醤油漬けが添えられているだけ、と清々しいほどに潔い。覚悟が必要なほど硬い肉を小さく切り分けられるよう、切れ味がよいことで知られるVICTORINOXのナイフを用意