話題の商品=オリバーソース、従来の発想を逆転した本格「どろソース」発売

調味料 1993.03.26 7516号 2面

【大阪】“どろ”という従来の食品では考えられないような大胆なネーミングのソース‐写真‐が発売された。発売元は、ご存じ関西の“どろ”臭さを売り物にしているオリバーソース㈱(本社‐神戸市兵庫区、078・511・2031)。同商品、ネーミングだけでなく、その開発経緯も従来の発想を逆手にとったユニークなもので、業界で注目を集めている。

“どろ”というのは、もとをいえばウスターソースを熟成させる時に、ほんの少し底にたまる粘りのある沈殿物(業界では“澱(おり)”といわれている)のことをいい、あくまでもウスターソースをつくる時の副産物としてできるもの。それだけに、各メーカーでは、この澱をいかに少なくするかという努力を図ってきた結果、現在では一釜当たりの生産量に対し三%以内に抑えるところまで技術開発が進んできた。

しかし、その一方でこの澱、ソース業界では、ソースの原材料である野菜や果実、香辛料などのエキスがぎっしり詰まった、ソース本来のコクと辛味が濃縮された本格ソースとして昔から知られていた。ただ、前述したように、あくまでもウスターソースの副産物だけに、できる量も少ないため一般市販用として量販するのは難しいとされ、各メーカーでは、特定の業務用ユーザーだけへの販売にとどめてきた。

そうした“澱ソース”を、同社が今回どうして一般市販用として発売するに至ったのか。その経緯について同社の道満雅彦社長は、「当社も最近、業務用ユーザーを中心にウスターの需要が増えてきた。しかし、もともと当社はとんかつソースを主力としてきただけに、どうしてもウスターをつくると、この澱が多くできてしまう。それならいっそのこと、この澱をつくってしまえということで取り組んだ」と説明。技術の未熟さ(?)を逆手にとった“逆転の発想”で開発したという。

以降、釜も独自の新しいものを導入するなど本格的な生産に向け取り組み、新製法では、一転して半分近くにまで澱のできる比率を上げることに成功。年間ベースで二〇万本(三六〇㌘換算)ぐらいまで生産が可能となり、今回の発売に踏み切った。

ただ、量販に向けての難点が全くないわけではない。というのも、もともと、エキスが詰まっているというだけあって“辛味”も普通のソースより強く、焼きそばやそばめし(焼きそばと焼きめしを混ぜたもの)など料理のかくし味という調味ソース的な使用が最適という。それだけに、汎用性はあるが、一回の使用量が少なく、商品回転率の面から言えば三六〇㌘の内容量が適切かどうかといった課題も多い。

道満社長は、「数量的な部分での苦戦は覚悟のうえ。それよりも、当社の七〇年の歴史の中で、新たなエポックをつくっていくためのアピール商品という位置づけで考えている」と、同商品の発売を新たなチャレンジに向けて起点としていくことを強調する。

しかし、ただそれだけでもない。同商品の開発に取り組んだ結果、「ウスター自体もいい品質のものができてきた」といい、逆にいいウスターソースが副産物としてできるようになった。近々、それを高級ウスター「クライマックス」というネーミングで、第二のエポック商品として発売する予定だ。

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