東京農大、国内初の淡水魚の魚醤油開発
東京農業大学醸造科学科の酒類生産学研究室・小泉武夫教授(東京都世田谷区、03・5477・2379)らのグループが、琵琶湖産ブラックバスとブルーギルの両淡水魚を主原料としたアルコール含有魚醤油風調味料を開発した。
原料として淡水魚を使用し、低塩およびアルコール発酵を伴った魚醤油の開発は国内で初めて。外来害魚として生態系を破壊し食用需要がないブラックバスと、酒造副産物である白ぬか(コメぬか)の有効利用が図られるというメリットもある。
従来の魚醤油や一般醤油の塩分濃度は約一八~三〇%と高濃度。しかし、同製品は、市販の減塩醤油と同程度の一〇%を実現した。この低塩化には“酒類生産学”と保存性向上の観点からアルコール含有がポイント。
清酒製造用白米の精米工程中に生じる白ぬかをでんぷん質副原料として利用。麹を加え五〇度Cの高温処理ででんぷんの糖化を行い、醤油もろみをスターターとして一五度C、三〇日間の短期発酵でアルコール分五%を生成した。また、この白ぬかのアルコール発酵によって淡水魚臭物質のピペリジンもマスキングされ、魚臭は官能的に全く感じられない。
淡水魚の魚醤油は東南アジアに存在する程度。両魚種とも高タンパク低脂質で、原料魚として優れている。環境保全と未利用資源の有効活用という立場からも、今回の開発は時代に即応し、将来性が高いといえる。
開発を担当した進藤斉助手は「調味料の専門家ではなく、酒造り屋が作った点に面白さがある」と述べ、製品について「魚醤油としては淡色で、風味もよく、窒素濃度も一般醤油と比較してそん色ない。従来の魚醤油の“かくし味”的用途からも実用上、何ら問題ない。主に加工食品用中間原料などの分野で需要が期待できる」と語った。