元気・長寿への招待 ヘルシーメニューの素材を追って:おから

1995.10.10 1号 6面

おからは英語でいうとソイパルプ。豆腐をつくる時に生れるパルプで長い間軽視されていた。日本でも豆腐の絞り粕として低くみられてきた。住宅の廊下や板の間のつや出しに使われたり、うさぎやモルモットの飼料とされ、食品としてあまり使われなかった。うさぎなど草食動物がおからを好んで食べる理由は腸が長く、不消化なおからが脱の蠕動を促進させ整腸効果があることを自然と知っていたから。

おからの成分は水分が多く、ビタミン類も少なく、ミネラルではカルシウムと鉄がやや多くみられる程度で、みるべき栄養食品とはいいにくい。この中で食物繊維の多いのが目立つ。無水換算でみると一七%以上もある。

食物の中で繊維は粕としてあまり注目されていなかったが、おからもこの例外ではなかった。ところが七〇年代の後半に入って英国のバーキット博士の研究発表で一転した。

博士の研究によると、南アフリカの白人と黒人の間でかかる病気に大差のあることが判明し、それが食べ物によること、しかも食物繊維による影響であることが解明された。

食物繊維=ファイバーフードは食品として栄養価値はあまりみられないが、心臓病・高血圧・ヘルニア・静脈瘤・痔・便秘・大腸ガン・糖尿病・胆石・肥満など諸病に卓効のあることがわかってきた。

このメリットを解析すると(1)かむ回数がふえ、満腹感を起こしやすくなる…肥満防止によい(2)胃に長くとどまり、栄養と吸収がよくなる…食べる量が少なくてすむ。肥満防止(3)腸内での吸収が抑えられる…ジュースなどを飲むと血糖が上昇するが、生果をゆっくりと食べると血糖は上がらず糖尿病に効果的(4)腸内細菌の構成が変わる…ファイバーフードは吸いとり紙のように発ガン物質を吸いとり早く排泄させる…ガン予防(5)腸の運動がよくなる…便秘、痔病を防ぐ(6)血中コレステロールのバランスをよくする…動脈硬化予防 =以上バ博士の論文より=

などと一石数鳥の効果が期待される。

現在、肥満・大腸ガンほかの諸病で悩むアメリカで、ファイバーフードは高く評価されビタミン以上の人気をよんでいる。かつてはソイパルプと軽視していたが、英語でも日本語のオカラとよぶように昇格し、オカラクック・ブックがヘルスショップでよく売れている。オカラ料理として、いり卵・ハンバーグ・コロッケ・パンケーキ・ソテー・ソーセージ・マッフイン・ドーナツ・グラノラほかとなり頭におからの文字を加えて、おからコロッケの登場となる。

日本の食生活も豊かになって欧米型に近づいてきたが、病気もアメリカ的な諸病が急増している。日本食の良さを見直す必要があろう。そして浮上してくるのが諸病克服の妙薬おからを愛用し長寿化の途を考えよう。

(食品評論家 太木光一)

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