百歳への招待「長寿の源」食材を追う:レンズ豆
豆の歴史は古い。レンズ豆は味が良く料理適性に優れ、菜食主義者の多い国では命の糧とされてきた。ヨーロッパでとくに人気だ。日本でも、料理のバラエティー・経済性などから成長が期待される。
(食品評論家・太木光一)
レンズ豆は歴史の古い食品の一つで聖書にも出てくる。原産地は中央アジアから南ヨーロッパにかけての地域で、ドイツ・フランス・スペインをはじめインドやメキシコなどで広く愛好されている。
呼び名は豆の形状が凸レンズによく似ているため。ドイツ語ではリンゼン、フランス語でリンティル、英語でレンズビーン、日本語でヒラマメとなる。
レンズ豆は調理適性にすぐれ、四~五時間水につけて戻すと三倍半ぐらいに増え、火の通りも早くなり一時間ぐらいで煮える。皮なしの場合はもっと早く煮えるが、煮え過ぎると煮崩れして溶けてくるので、用途によって使い分けることが望ましい。
豆らしい豊かな香りと、ちょっとほろ苦い味が人気の秘密で、しかも食べ続けてもあきることがない。と同時に料理のバラエティーが極めて広い。
レンズ豆を成分的にみると、タンパク質に恵まれ、ビタミンA・B1・B2も多く、ミネラルでは鉄・リン・カルシウムを含み栄養食品と呼べよう。さらにこれをもやしにするとビタミンCとEの含有量が著しく増加する。
インドに多い菜食主義者は豆から栄養を多く摂取する。メキシコのインディオはこの豆とトルティヤとサルサを命の糧としている。またアメリカのベジタリアン・レストランでも多用される。
レンズ豆の利用法として、もやしをはじめスープ・ポタージュ・豆サラダ・豆の煮込み・肉の付け合わせなどに。日本にみる甘い煮豆風のものはない。
利用法としてサラダにすると美味。炒め物の場合にはベーコンとよく合う。アメリカのベジタリアンは大豆や小豆よりも好み、サンドイッチやサラダとして人気が高い。
インドではおふくろの味・伝統の味として喜ばれ、消化もよいので朝食にも利用。スープ・カレー煮・ペースト状にしたフライなど調理範囲も極めて広い。
質素なドイツ料理にもレンズ豆は大活躍。ベーコン・ソーセージとレンズ豆が巧みに利用され、世界的に有名なのはリンゼンズッペと呼ばれるレンズ豆のスープ。
内容はレンズ豆・ベーコン・リーク・ニンジン・セロリの葉・ベーコン脂・タマネギほか。時間をかけてドロッと煮込んだスープは主菜としても十分。全国民の好物だ。
スペインでもレンズ豆は伝統の味として親しまれ、ドン・キホーテの好んだメニューはそのまま好評で庶民の味となっている。
日本でもフランスやスイス製のスープや水煮製品が販売されている。