食からの暑さ、寒さ対策 薬膳アドバイザー・謝さんに聞く
日本でも健康を考えた食事として中国の薬膳料理が最近身近になってきた。東京・銀座で薬膳料理の店「Xing Fu(シンフウ)」の薬膳アドバイザー、謝敏〓(しゃ・びんき)さんに冷えに効果がある薬膳料理と中国での冷えに対する対処の仕方などを聞いた。
中国では冷え性の方の治療法は、薬よりも食事療法がより重視されます。どんな料理が身体のどんな症状にいいのかなど家庭で自然と教わりました。だから薬膳といっても普通の中国の家庭料理なんです。それに中国では日本のようにどこに行っても冷房が効いているなどということはないですから、冷房病というのは存在しませんね。
身体を温める食べ物をあげるなら鹿肉、牛肉、にら、とうがらし、それに漢方の当帰(注1)や龍眼肉(注2)などを食べることをお勧めします。薬膳酒を飲む習慣もいいでしょう。「紅参当帰酒」を夕食時か寝る前に三〇から五〇ccくらい飲みます。お酒が血液の循環を良くする働きがあるので、漢方諸薬と合わせることにより冷え性に効き目が早く現れます。
冷え性の人は胃腸も弱いことが多いです。汗をかいた後すぐに冷たい飲み物を身体に入れることは胃腸に負担がかかります。
お風呂から出たすぐ後や運動のすぐ後などつい飲んでしまう冷たい飲み物は、二〇分ほど我慢してから飲むようにしたほうがいいでしょう。
今回話題の冷房病は寝ている時に最も危険だと言えます。寝ている時の脈は日中平均八〇を脈打つ人が五〇にまで下がり血流や皮膚が弱い状態になっています。そこに冷たい冷気をかけ続けることは危険だと思います。
私の場合は竹の皮で編んだシーツを使用することで涼を得ているので、夜中は冷房をかけません。これは中国では一般的に使用しているものです。
冷え性で悩んでいる人はまず食べ物の性質をよく理解して食べるのが一番の療法です。また、暑いからといってすぐ冷房をかけるとか冷たいものを飲むとかを少し控えるように心がけることですね。
日本でも昔の人が言ったそうじゃないですか。「暑い暑いと思うから暑いんだ。そんな時こそ涼しいと思えば自然と涼しくなる」って。その通りだと思いますよ。
(注1:当帰)せり科のトウキの根を乾燥したもの。味は甘辛。
(注2:龍眼肉)ムクロジ科の龍眼の果肉。味は甘。
▽薬膳料理店「XingFu(シンフウ)」03・3289・4245
▽謝敏〓=上海市人民政府研究室 特約研究員