目は肝臓の窓 五行はみんなつながっている

2005.06.10 119号 2面

「中国には昔から“水能浮舟、亦能沈舟、食能養身、亦能傷身”ということわざがあります。水は舟を浮かべることもできるが、また舟を沈没させることもある。人と食の関係も同じことがいえます。食事で身体を元気にすることもできるが、悪い食事をとることで、身体を壊してしまうこともありえるのです」と、薬膳アドバイザーの謝敏〓(キ)さんは言う。今回は「目を気遣う」話を事例として、中心となる「五行説」の考え方を教えてもらおう。

その季節やいまの自分自身の身体にあった食べ物をとることが、薬膳の基本。薬膳の作用法則「五行説」は、自然の運行を「木・火・土・金・水」の5つの元素(万物のもと)でとらえる。「五臓・五官・五志・五味」などに相関関係を持つ、季節変化や人体とつながりを持つという考え方だ(表参照)。

「一番左端の“木”の列を見ていきましょう。五臓は肝、五官は目、五志は怒、五味は酸、五声は呼‐‐となっています。目はこの列の項目です。パソコンの使い過ぎで目が疲れてます…という人、最近多いですね。こういう場合は肝臓を養う。肝臓は食べたもの、飲んだものから栄養をとって血液にするという臓器です。その証拠に、飲み過ぎて肝臓が疲れたという時、目が充血するでしょう」。

表は、双方向で見ていくのだそうだ。肝臓が疲れると怒りやすくなるが、逆に怒り過ぎると肝臓を傷つける。これを「大怒傷肝」という。自分の肝臓を守るのに怒りを抑えるのは、上手な対策といえる。五声を見ると「呼」、どなり声をたてたりするのはよくありませんよ、ということになる。

「マイナス20度くらいの寒い所に行くと耳や鼻が痛くなる。ところが目は平気。それは目が木の臓器だから。自然の中で生えている木は、熱には弱いけど寒さには強いでしょう。目が見えにくい時、力を入れて見る。これが一番悪い。身体は総じて無理させない方がいい。ではどうするか。養生します。長生きのための根本的な手入れです」。

<謝さんお勧めの目の養生法>

★その1 食べ物は肝臓を養うもの。酸っぱいもの、レモン・酢・杏・サンザシ・クコの実。それから身体が涼しくなるもの、セロリ・メロン・スイカ・菊花茶

★その2 水分をたくさんとることで肝臓を洗って毒素を尿から排泄

★その3 イライラしない。怒らない

★その4 1時間ごとに遠くを見る。緑の葉を数えてみる

★その5 目の周りの血行不良を解消するよう、周りをマッサージする。冷たいオシボリで押さえる

◆プロフィル

しゃ・びんき 1953年上海生まれ。84年来日。86年東京大学薬学部薬品作用学教室に研究生として入学。89年星福薬膳銀座店オープン。2003年日本東方医学会評議員。04年(有)星福薬膳企画・代表取締役社長兼薬膳アドバイザー。

★中国薬膳料理・星福(しんふう)

東京都中央区銀座6-9-9

電話03・3289・4245

◆人体は経絡でつながっているから…

人体は、血管と経絡(五臓六腑に通じる気の通り道)で上から下までつながっているんです。本当かどうか、こんな実験はいかがですか。身体に冷えを感じる時、寝る前に、足の裏の指の真ん中にショウガを薄く切って貼ってごらんなさい。身体を温めるショウガの効果で寝ている間、全身が温かくなって、鼻からショウガの匂いがしてくるはずです。

菊の花の咲き乱れる川の下流には、目のぱっちりした美人が多い。中国にはそんな言い伝えがあるという。「菊花(きくか)」は、疲れ目を癒し目の充血をとってスッキリさせる。お湯で溶くだけのステッィクタイプの菊花茶『香菊花(しゃんきくか)』『杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)』は六味地黄丸(ろくみじおうがん)に枸杞子(くこし)と菊花を加えた漢方薬。前二者には肝腎を養い養血を増やす作用がある。

(日本中医薬研究会消費相談窓口 電話03・3273・8891)

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