百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「しょうが」
今回は、歴史の長い中国の健康・長寿食品から最近急激に脚光を浴びているものを二つ。日本では数年前までは存在すら知られていなかった羅漢果。古くからありながら東南アジアに端を発し、日本でも新たなブームが予感されるしょうが。新顔、お馴染み顔取りまぜてご紹介。
(食品評論家・太木光一)
しょうがは生姜、乾姜ともに漢方薬として貴重な薬材である。日本には天平時代に中国から渡来し、食物に風味を添える香辛料として利用されてきた。また、風邪やのどの痛みを止める生薬として珍重された。
原産地はインド、マレーシアなどの熱帯圏で、東洋の特産物である。乾姜は大量にヨーロッパへ輸出されていたが、最近ではジャマイカやキューバでも栽培されている。非常な好温性で、発芽には一八度Cを要し、生育適温は二五~三〇度C、一五度以下になると生育は停止、しかも乾燥を嫌い、さらに多日照が必要である。
根茎は香辛料として評価が高く、成分はジンギベレン、ジンギベロール、カフェイン、ボルネオール、テレピン属の揮発油にもとづく芳香と結晶性のジンゲロン油性のショウガオールにもとづく辛味を持っている。
この特性から漢方薬としての薬用効果は極めて高い。
すなわち、
(1)健胃作用と食欲増進…しょうがは消化液の分泌を盛んにし、胃や腸の運動を促進させる作用がある。とくに芳香が強く、味の苛烈なものがよい。
(2)食中毒防止…腸に炎症を起こす病源菌に対して殺菌性・抗菌性がみられる。
(3)鎮吐作用…嘔吐、おくび、しゃっくりなどを鎮める作用がある。めまい防止にもよい。
(4)かぜ防止…身体を温め、血行を良くし、発汗作用、痰をとる作用もあり、風邪防止に。
(5)身体のむくみをとる…利尿・発汗作用があるため、身体の水気をとる。
(6)女性の病気に良い…適度の芳香性興奮剤であり、血行を良くするので、冷え症や生理不順などにも効果的。
漢方の特性として副作用もなく、単なる食品でないことが理解されよう。
しょうがのおもな使途は野菜用である。また、加工調味料としても相当使われている。
乾燥品としてソース、カレー、しょうが酒、ジンジャエールなどに使われる。漬物としてみそ漬、粕漬、砂糖漬、梅酢漬などに。砂糖漬はビクトリア女王の大好物であった。また梅酢漬は別名紅しょうがとも呼ばれる。
おろししょうがはわさびの代用として刺し身の薬味となる。刻しょうが同様に矯臭作用がみられる。人気の高い豚肉のしょうが焼などはこの矯臭性を上手く利用したもの。
しょうが湯やしょうが酒は風味ある飲料として感冒を防ぐ。アメリカやカナダで愛飲されているジンジャーエールは巨大な清涼飲料として成長をみせた。
日本ではしょうが漬の需要が高く、すしチェーンや牛丼チェーンのガリは欠かせない。消費は急増し、中国、インド、ベトナム、バングラディシュほかからコンテナーで輸入されている。
しょうがは食欲増進・整腸作用大、かぜ防止などの諸効果が多い。たべやすく安価。
百歳元気のためにも愛用をおすすめする。