再び関心、和風薬膳 2000年前から中国伝統医学がベース

1996.11.10 14号 15面

薬膳料理が日本に入ってきたのが一九八〇年頃。当初はもの珍しさから話題になり薬膳レストランもショービジネス化。フルコース一万五〇〇〇円という法外な価格まで飛び出す始末となった。その後、薬膳レストランは全国で数えるほどに衰退。薬膳ブームは去った。しかし、最近の健康志向が再び薬膳への関心をよびさます。健康雑誌や女性雑誌において、取り上げられることも多くなった。

そんな折、名古屋スズキクッキングサロン(主宰・鈴木洋子さん)が、東京から和風薬膳研究家の岡本清孝氏を招き、入門の会を開催。初歩的な薬膳の話から、実際に試食し味わうという主旨で行われ、三〇名ほどが参加した。

ここで、当日の話を紹介してみると…。

中国医学では、五臓六腑それぞれの機能を強め、病気を予防する食材を、クスリと考える。もともと治療食だったという薬膳料理をおいしく日本人の口に合うように工夫したのが、和風薬膳。より身近な料理となった。どんな食材がどの臓器の働きに役立つかを知っておくと、その日の体調からメニューを立てることができる。

「呼吸器系を強めるならゆり根、消化器系の脾臓や胃なら山いもやナツメが効果的です。腎には色が黒い食品、たとえば黒豆、黒キクラゲがいいなど、食材には、特定の内臓を強める個性があるんです」。

西洋医学に比べ漢方は長く続けないと効きめがないと言われるが、岡本氏はそれは間違いで、三日試して効果がなければ中断した方がいいと話す。

自然の摂理にそった考え方をする薬膳。夏野菜は身体の水分を除いたり身体を冷やしてくれる。反対に冬野菜は体を温める役割を持つ。いま見失いがちの、自然と人間との共存を大切にすることが、人間の健康に役立つことになるのだろう。

●当日のメニューから(エシャロットと香菜の香り酢の物)

◆材料(4人分)

エシャロット2株

香菜1束

いか80g

五味子酢(ごみしす)60cc

小茴香(しょうかいこう)少々

醤油適宜

◆作り方

(1)エシャロットは根と葉先を切り、よく水でさらしておく。香菜は適当に切る(2)いかは短冊に切り、軽く茹でておく(3)五味子を加えた酢に小茴香と醤油を加えひと煮立ちして冷ます(4)(1)と(2)を盛りあわせ(3)をかける。(五味子酢=市販の酢500ccに対し五味子を5gほど直接混ぜて一晩置く。五味子は水分を補給し、体調を整する働きを持つ)

◆和風薬膳研究家、岡本清孝氏のプロフィル 1935年京都生まれ。法政大学経済学部中退後、辻氏に師事。辻学園調理専門学校分校校長となる。その後北京医薬大学にて中医学士の資格を取得。現在、東京フード学院院長。和風薬膳の普及・教育に努めている。最近の著書に「お粥パワー」(主婦と生活社)がある。

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