どうなる消費税率アップ 導入直前揺れる食品業界

1997.02.10 17号 9面

三から五。4月からの消費税アップの影響で、すでにガス・電気・電話料金などの値上げが決定している。となると、食費に関する影響が気になるところ。家計での食費が占める割合はほぼ決まっており、好不況にはそれほど影響されないといわれるが、今回の消費税率アップはいろいろな不安材料が重なっているだけに、消費者への心理的影響は大きいとみられる。食品メーカー各社にとっては商品力が問われることになり、企業格差に拍車がかかりそうだ。消費税率アップを間近にひかえた食品業界周辺のメーカー、流通の表情と問題点を追ってみた。

飲料メーカー

清涼飲料は約四割が内税の自販機で販売されている。一本一一〇円の税抜き販売価格は一〇七円。増税で価格を据え置いた場合、実際の税抜き販売価格は一〇五円に値下げしたことになる。

仮に自販機で一二〇円にした場合、税別一一四円となり、便乗値上げといわれかねない。自販機では一円対応が出来ず、一〇円単位が条件なだけに、販売価格の問題に各社は頭を悩ませている。

全国に二〇〇万台の自販機が稼働中で、各飲料メーカーが増税分を自社で吸収すると、総額で二〇〇億円強の負担となり、非常な収益圧迫は間違いない。「何とか適正に、消費者に負担してもらう方法を模索中」という。しかし「もし最大手のコカ・コーラが据え置いたら、うちも据え置かざるを得ない」という声が大勢。コカ・コーラグループの出方を見守るというのが、飲料メーカーの大方の心情のようだ。

これまでの飲料業界は、二五〇ミリリットル缶、三五〇ミリリットル缶、ひいては五〇〇ミリリットル缶まで、一一〇円という横並びの価格で成長してきた。現状ではコカ・コーラグループは一〇〇%吸収する可能性は低いとみられる。

しかし全品一二〇円に値上げすることは不可能なことから、容器・容量・ブランド別に新価格を設定するか、新製品で一二〇~一三〇円の商品を発売するケースが考えられている。

一方、コンビニなど手売り市場では、すでに横並びの価格が崩れつつある。自販機と手売りは同一価格が条件だが、価格体系を別にする動きもある。

また、キリンビバレッジは、通常一二六円設定の五〇〇ミリリットルPETで、「きりり」などを一三〇円、また一〇〇%果汁の「トロピカーナ」は一五〇円と「商品の価値に見合った販売価格を設定」(同社)しており、消費者から支持されている。

酒類メーカー

酒類は内税方式が大方だが、今回の税率アップに伴って外税方式に変更する動きが強まっている。すでにアサヒビール、メルシャン、協和発酵などは外税方式にすると発表を行っている。

ただ一部の小売業界からは、価格の明確化という点から内税表示を望む声もある。外税にした場合、価格に端数が出るのが問題。この端数処理にはトータルで調整する案が最有力と見られる。

コンビニ

若い客が多く、生活必需品を中心に扱うコンビニは、消費税アップによる売れ行きへの大きな影響はないとみるところが多い。いまも食品、雑貨などは外税対応。ただ、酒類については一部チェーンを除き、内税で販売しており、今回の税率アップを機に、徐々に外税への切り替えが進むとみられる。

現在、コンビニの平均客単価は六〇〇円弱(酒なし店)。主力商品の弁当は、五〇〇円以下の価格帯がボリュームゾーンだ。今後は消費税五%を加えた価格を頭に入れた商品開発、また消費者の反応によっては、価格帯の引き下げの動きも予想される。

大手C・S

大手チェーンストアは、税率アップ後の販売については「プラスに働くことはないが、どの程度影響するか状況が読み切れない」とし、消費拡大には厳しい見方を示している。

日本チェーンストア協会では、食品、衣料品、雑貨など部門ごと、アイテムごとに内税・外税など方式が異なることで、現場で混乱を招くことのないように「税率の一本化が望ましい」としている。

POSレジの税率変更は、初めて消費税が導入された八九年に比べれば「それほどの混乱はない」が、店ごとにマニュアルや要員を確保して作業のスムーズ化を図るよう、各社秘策をねっている。

外食

外食産業はファストフード店、ファミリーレストランをはじめ、ほとんどは外税になっているため、税率アップによるシステム的混乱はないが、「日本の経済が低迷している中での税率アップなので、消費マインドの冷え込みによる売り上げのマイナスは避けられない」(日本マクドナルド)などの見方がほとんどである。また税率アップを、メンバー優待割引制度で緩和させる動きもある。

消費者にとっては実質値上げになるため、“税込み低価格”を売りにしているところは苦戦しそう。外食大手で内税となっているのは、ドトールコーヒーや牛丼の吉野家、ミスタードーナツなど。中には内税を外税に改める動きもあるが、「ギリギリまで結論は出ない」(吉野家)と対応策を模索中だ。

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