「海藻と健康」 野田宏行・三重大名誉教授講演要旨

1997.04.10 19号 6面

海藻はビタミン、ミネラル供給源として知られているが、栄養学的にはエネルギー源としての価値は低く、食品学的にはあまり評価されてこなかった。しかし、食生活の高度化、多様化に伴って低エネルギー食品として、また食物繊維の生理作用が明らかになるとともに、各種の有効成分が見いだされ、医食同源の見地から人々の関心が高まっている。

海藻は日本沿岸に約六○○種生育するが、機能性が確認され、利用されているものは約四○種にとどまる。機能性の主なものは抗菌作用の抗循環器疾病、抗腫瘍作用が知られている。

昆布、ワカメにあるラミニンは、血圧降下作用があり、食物繊維は寒天、ヒジキ、アオノリ、アマノリ、マコンブに含有率が高く、血圧降下、コレステロール低下、血糖調整、抗有害物質、整腸作用などがある。また、緑藻のヒトエグサ、昆布のアルギン酸、ワカメのフコイダンなどには、抗腫瘍作用があると認められている。

さらには、海藻多糖類に抗ウイルス作用があり、ワカメやヒジキには植物ステロールであるフコステロールが多く含まれており、血中のコレステロール含量を減少させる。

このように、海藻は古くから日本人の食物として親しまれてきたが、最近は成人病、老人病の予防のために注目されている。食用海藻に免疫系、神経系、循環器系、消化器系の調節に関する機能性が認められ、常食すれば持続的に穏やかな効果が期待できる。

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