クチーナ通信 お酒は料理の素敵な伴奏者

1998.03.10 30号 15面

イタリアと言えば連想するものの一つがワイン。その生産量においてはフランスをもしのぐと言われる。おいしいワインなくして食事は楽しめない、という意見が伝統的な国である。最近はアメリカの健康志向を受け、食事中は水で通す人も少なくないようだが、肉の脂肪分を分解するなど食事の消化を助ける効果もあるワインを適度にたしなめば、食は進み健康にも良い。幸い私の周りには料理に携わる人が多いせいか、“おいしいワインなくして何の食事ぞ”という常識がまだ健在で嬉しい。

食事にはワイン以外にも色々な伴奏者が登場し、楽しみを増やしてくれる。それはワインの仲間、もしくはそれ以外の様々な酒類だが、その性質や風味などによってざっと食前酒(アペリティーヴォ)と食後酒(ディジェスティーヴォ)に分けられる。アペリティーヴォの語源は「アプリーレ=開く」、つまり軽いアルコールや炭酸で胃を開かせ、食欲を促すウオーミングアップのための飲み物ということになる。例えばグラス一杯のスプマンテ、あるいは有名なカンパリのソーダ割り。「クロスディーノ」といううっすら苦みのきいたノンアルコールのソーダなども妙に郷愁をさそう味。

前述の発泡酒や白ワインをベースにしたカクテルなどもよい。食前酒はレストランで一番先に注文しメニューを見ながら飲むのも良いし、レストランに入る前にバーなどで一杯やってきても良い。どれだけ身近なものであるかは、彼らが何か討論になった時、しばしば賭けるのが「今日のアペリティーヴォ」であることからも知れよう。

ディジェスティーヴォは「ディジェリーレ=消化する」という意味。前菜からデザートまで詰まった胃はかなりきついが、そこに強めのアルコール類や、薬効成分を溶かしこんだリキュールなどを少したしなむことで、消化を促進するというわけである。

ディジェスティーヴォには好みに応じて多種多様な種類がある。イタリア製で人気がある代表格はグラッパ、アマーロ、サンブーカ、それにリモンチェッロといったところ。レモンの皮で作るリモンチェッロは最近日本でも人気があるというが、キンキンに冷やしたものを専用の細長いグラスで一杯飲みながらおしゃべりしていると、はち切れそうだった胃がスーッと楽になっていく。

「イタリア人は日本人に比べてアルコールが強いからそんなに飲めるんだ」と言う意見もある。彼らは確かにお酒が大好きだ(そして多分日本人よりお酒に強い)けれど、例えば食事以外の時にワインだけをがぶがぶ飲む、という馬鹿なことはまずしない。

お酒はあくまでも食事のための良き伴奏者であって、それだけでは身体を壊してしまうことは彼らも知っているのだ。これらのお酒にはちゃんと食事とともにとることでその順番にかなった効能があるのである。

(イタリア・トリノで料理修業中 合田達子)

LIMONCELLO (リモンチェッロ)

食後酒のリモンチェッロは実は簡単に作れるお酒ですが、問題は日本には90度以上のアルコールが販売されていないこと。多少アルコール度数は低くなりますが、市販のリカーで代用します。

【材料】市販の果実酒用アルコール1、レモンの皮20個分(白い部分はむかない)、氷砂糖900g。

【作り方】氷砂糖、レモンの皮をアルコールに漬けこみ、1カ月ほど冷暗所に保存する。氷砂糖が溶けたら飲める。冷凍庫でよく冷やし、グラスもよく冷やして供する。

※早く飲みたい場合

レモンの皮とアルコールを漬けて1週間ほどおく。砂糖800gに水150㏄ほどでギリギリまで濃度をあげたシロップを作り、冷めてからアルコールと合わせる。目の細かいフィルターで濾して出来上がり。

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