百歳への招待「長寿の源」食材を追う 「アボカド」“森のバター”

1998.04.10 31号 14面

アボカドはラテンアメリカを原産地とする熱帯果物で、古代インカ帝国時代から主食として食べられてきた。一六世紀頃にはメキシコの市場に商品として流通をみている。メキシコ原住民アデックの言葉「アファカトル」からアボカドの名称が生まれた。英語では別名アリゲーターペアと呼んでいるが、訳すとワニ梨となる。ある品種は皮肌がザラザラで、ワニを連想させるからである。

代表的な品種はメキシコ、グアテマラ、ウエスト・インディアの三種類。メキシコ種は小さく薄い皮で亜熱帯地方で栽培、グアテマラは大きな果実で皮も厚く冬から春にかけて出回る。ウエスト・インディアは比較的大型種で熱帯産が主力。三種類を合わせて周年供給可能の果物である。

果形は球状または西洋梨型がある。果皮の色は青・黒・褐・紫黒色などとマチマチであるが、熟すとすべて黒色に変わる。果肉は黄色で、口に含むと甘くも酸っぱくもなく、無塩バターのようにとろける風味が感じられる。ねっとりとしてきめが細かく、中心に大きな丸い種子がある。

インディアンのスタミナ源ともいわれ、チーズとバターと卵をミルクで割ったような脂肪分がある。このため“森のバター”の異名を持つ。しかし少量の食塩をつけて食べると、どこにこんなうまい味が潜んでいたのかと驚くほどの濃厚な味に変わる。

甘味も酸味もないので、自由に味付けしたり、他のものと取り合わせすることができるため、デザート用果物より主食用果物と呼ぶほうがふさわしい。

アボカドはフルーツとしては珍しく炭水化物が少なく、タンパク質やビタミン・ミネラルが豊富。しかも果肉が柔らかく消化吸収率は八○~九○%と極めて高い。

成分表をみると一○○グラム当たり、エネルギーは一九一キロカロリーと高い。タンパク質二・五%、脂質一八・七グラムと極めて多く、これに優る他の果物は見当たらない。しかも植物性であるからコレステロールの心配も全くない。またカルシウム・鉄ともに多く、ビタミンではA、B1、B2、Cにも恵まれている。アメリカでは、消化がよくスタミナがつき、太る心配のないフルーツということでお年寄りに特に人気が高い。

食べ方としては、そのまま食べたり、サラダの材料やサンドイッチ・カナッペの材料としても喜ばれている。大きな種を取り除き、くぼんだ部分に塩をかけ、スプーンで果肉を混ぜて食べてもおいしい。フレンチドレッシングをかけたサラダも乙なものである。

日本では刺身のように、わさび醤油で食べるとトロに似た風味で喜ばれている。手巻き寿司の中にアボカドを入れたものが、カリフォルニア巻きと呼んで売られているが、味がよく合うのでファンが多い。またすりつぶしてサンドイッチの具にすることも普及してきた。

周年流通し価格もお手頃。高齢者のスタミナづくりに良く、長寿食品と呼ぶことができよう。

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