クチーナ通信 シチリアの冬瓜風スープに納得

1998.08.10 35号 21面

今イタリアにいるというと、時折「アチラは気候が良くてうらやましい」と言われることがある。

そんな時いつも返答に詰まってしまうのは、例えば外国人が日本を「温暖な気候の国である」と断言するのを聞く気持ちと同じかもしれない。

イタリアも縦に長い国であるため、気候は日本同様地域差がある。例えば私の住むピエモンテ地方は、北部とはいえアルプス山脈をいただく盆地なので、夏にはムシムシした熱帯夜も珍しくはない。

それを逃れようと昨年の夏はシチリア島へ出掛けたのだった。ゲーテの昔から語られてきた南国に興味もあり、空気も乾燥しているという。「イタリアは気候が良い」という風聞を、私自身鵜呑みにしていた節もあった。

しかし、シチリアの夏は甘くなかった。自然発火による消防車出動が夏の日常風景と言えばその凄さがご想像いただけるだろうか。

「自然を甘く見てると痛い目に合うぜ」と言わんばかりの容赦ないカラッカラの日差し。私は脳天を直撃され、食欲もすっかり失せ……と書ければカワイイが、残念ながら食欲だけは衰えない性分である。

食堂に入り、店の人に「何か暑さが吹き飛ぶようなものを!」とリクエストすると、湯気のたったスープが運ばれてきた。

うっ、熱いのかァ……と一瞬ためらったが、中身は冬瓜によく似た野菜スープ。

フーフー飲んで一汗かくとさっぱりし、なるほどこのあたりの人々はこういうもので夏をしのいでいるのか、と感心したものだった。

そして一週間も経った頃暑さ嫌いのはずの私も、「暑いうちは屋外でダラダラやり過ごし、日が暮れる頃表に出る」という南国での過ごし方を何となく会得した形になった。イタリアは気候が良いっていうけど、ようするに慣れればどこでもそれはホントだなァ、などと思いながら……。

しかし、それでもやはりムシ暑さだけは慣れたくナイ。というわけで、今年もまた南国への脱出を画策中だが、果たしてどうなることか…?

(イタリア・トリノで料理修業中 合田達子)

◆鰯のパスタ

☆材料4人分

パスタは好みのもの適宜(標準、80~90g/人)、鰯大4尾(掃除済みのもの)、ニンニク1片、オリーブ油適宜、野生フェンネルの葉大1房、炒った松の実、レーズン各大2、白ワイン適宜、あればサフラン適宜。

☆作り方

(1)パスタ用の湯を沸かす。

(2)フライパンにオリーブ油を熱し、ニンニクを入れて香味を出す。

(3)身だけにした鰯を(2)に加えて焼きながら、身を崩していく。十分火が通ったら白ワインを加えてアルコールを飛ばし、さっと湯がいて刻んだ野生フェンネルを加える。

(4)レーズン(と、好みによりサフラン)を加え、汁気を飛ばし過ぎぬ程度に5分ほど煮る。

(5)塩で味を整え、炒った松の実を加える。

(6)パスタを茹であげ(5)に加えて手早く和え、熱いうちに供する。

シチリアズッキーニのスープ

シチリアズッキーニは細長いヘチマのような野菜。北部でも都市部ではかなり出回っています。白瓜や冬瓜に味も似ているので代用してもおいしく出来るでしょう。

☆材料4人分

冬瓜〓~〓個(大きさによる)、玉ネギ小1個、完熟トマト2個、オリーブ油適宜、おろしチーズ適宜。

☆作り方

(1)冬瓜、玉ネギ、トマトはすべて1~2センチメートル角程度に刻む。

(2)鍋にオリーブ油を熱し、玉ネギを弱火で炒める。

(3)薄く色づいたら冬瓜、次いでトマトを加えて炒め、あれば白ワインを少々加えて飛ばした後、水をひたひたに注ぐ(野菜から水分が出るので、多過ぎないように)。

(4)柔らかく煮えたら塩、コショウ少々で味を整える。

(5)皿にもって供する。各自好みでおろしチーズを加える。

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