百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ドクダミ
どくだみとげんのしょうこは西洋医学万能、漢方薬の人気の中で、日本原産の誇るべき薬草である。平安時代から日本人の生活にとけ込んだ民間薬で、いずれも卓越した薬効を誇り庶民の生活を救い健康と長寿に役立ってきた。
(食品評論家・太木光一)
どくだみは悪臭も強く毒草のように思われ大変に損をしているが、この地方名にみるように、ジュウヤク、ドクダメ、ドクトマリ、ドククダシほかとなり、分布が広いために呼び名も多い。
とくにジュウヤクの意味は一〇種類の薬効がみられるので「十薬」の文字が使われ、また重要な薬を代表して重薬とも書く。どくだみは毒を抑える毒矯(ドクタメ)から変化したとみられている。
日本各地に分布し、半日陰の地を好むが、平地から山地まで、荒地や林の縁などにもみられ生命力は極めて強い。初夏にかけて白い清楚な花をつける。葉、茎、根は薬用に、若芽、若葉は食用とされてきた。
とくに花の咲いている時は盛期。地上部を刈り取り、水洗いして風通しの良い場所で完全に乾くまで陰干しする。乾燥したら粗刻みして保存するが、これがどくだみ茎である。コスト不要の手づくり茎をおすすめする。
健康食品店やデパートではティーバッグ入りや丸薬に加工したものも販売されている。どくだみ茎は苦味、渋味がなく飲みやすい。
効用として動脈硬化の予防になる。利尿作用も強く便通をよくする。「一草よく百毒をおろす」の古語の通りで、最近では浄血作用やメラニン色素の沈着を防ぐことも判明してきた。
各種の腸内細菌および糸状菌に対しても抗菌作用があり、流感にも抗ウイルス作用が報告されている。また肉芽組織再生促進や、毛細血管脆弱性の強化にも役立つとしている。
慢性の湿疹、じんましん、にきびや吹き出物に効果がみられ、この点で美容面にもよいとされている。さらに鼻づまり、蓄膿病やPR毒、鼻炎、むくみなどの腎臓病、下痢などの胃腸病などにもよい。まさに十薬の名にふさわしい伝統の薬草と呼べよう。
食品としてのどくだみは、ゆがいた葉はあえ物として酢味噌あえ、ごまあえにすると残ったにおいもあまり気にならない。慣れてくればおひたしや汁の実にもできる。バターで炒めてもよい。
柔らかい葉を衣を薄くして天ぷらにすると、どくだみ臭が消えて捨て難い味となるが、油の温度が低いと臭みの残る場合もある。天ぷらという料理は臭みをとるばかりでなく、硬いものを柔らかにする作用がみられ、山菜料理には便利な調法法といえよう。
珍味としては生葉を刻んでごま油で炒め、にんにく、しょうが、オールスパイス、レモン汁、塩などで味をととのえ肉料理の薬味として使用してもよい。
また乾燥葉を木綿の袋に入れて口を閉じ沸かした湯船に入れ薬湯として楽しむ。腰痛、肩こり、冷え症にもよく効く。高い効用が知られるにつれ、最近では女性層に薬用茶や薬湯のファンが増え自然回帰の声が聞こえてくる。