「ベトナムの食」拝見記・ホーチミン

1999.03.10 42号 16面

我々と同じように箸を使い、コメを主食とする国、ベトナム。国の情勢では決して豊かとはいえないが、食に関してはなんと豊かなことか!

市場に山積みに並ぶ食材。野菜は緑濃く種類も豊富。南シナ

海から海の幸、雄大なメコンから川の幸。豚も牛もくまなく、鶏はもちろんアヒルまで食す。熱帯地方特有の色鮮やかな果実。そしてコメが1年に3度取れる肥沃な大地。その輸出量は世界第3位を誇る。

日本米とは違うパサパサの長米。スープやおかずで湿らせ箸とスプーンで口に運ぶ。代表的な料理、生春巻(ゴイ・クオン)や揚げ春巻(チャー・ゾー)の皮はライスペーパー、フォーと呼ばれる日本のうどんに似た麺はコメ粉で作る。

軽食やおやつにもコメが使われる。

ベースの味に好みで味を加えていくのがベトナム流。生野菜、ハーブやライム、ベトナムの味ともいえる魚醤のニョク・マムや唐辛子などを好みで器にどんどん加える。好みの味にしていくんだから、まずいはずがない。

香菜やライムを使う点では近国のタイ料理にも共通しているが激辛料理は少なく、むしろ薄味であっさりしている。食の二大大国、中国・フランスの支配下時代の面影を残しながらも、すっかり自国の味に仕立ててしまった。

油っ気が少なく野菜をたっぷり摂るベトナム食は日本人にとって何となく懐かしくもあり、ヘルシーだ。

現地人ガイド、ハイさんと一日話しているとベトナムにはたくさんの迷信があるらしい。なかでも活気あふれる市場に関する迷信を紹介しよう。

「市場は楽しいところ。定価なんてないから交渉に交渉を重ねるんです。その交渉が楽しい。だけどこの街に住む私でも早い時間には滅多に行きません。ベトナムにはたくさんの迷信があって、一日の客の入りがその日最初のお客で決まると信じています。最初の客が値段交渉だけして買わずに帰ると店の主人は火をたいて煙りを出してお払いをします。私は冷やかし半分、遊びに市場に行くことの方が多いから、一番の客になると店の主人からすごい剣幕で叱られます。煙をたかれる客ですね」。

他にも三人で写真を撮ってはいけないとか、男性が家を出る時に最初に女性を見るともう一度家に戻るとか、これって日本でもありそうなものばかりだ。

人口七三〇〇万人。面積は三三万平方キロメートル、九州を除いた日本の面積とほぼ同じ。関西空港からわずか五時間ほど、時差も二時間しかない。海外で食べる物に困った経験を持つ人にもヘルシーでおいしいベトナムをおすすめしたい。

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