百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「リンドウ」

2000.01.10 52号 11面

リンドウとは漢名の「竜胆」を音読みにしたもの。花は非常に美しく、秋の色に最適の紫色で愛好者が多い。一部は生花用として栽培されている。

古名は「ニガナ」と呼ばれていた。熊の胃は苦いものとされているが、正しくは胃ではなく胆のうである。熊と比べて架空の動物の竜はさらに強大であるので、熊の上をいく「竜胆」と名付けられた。

リンドウは中国でも平地から高山までの原野・丘陵・山麓などに自生する多年草である。やや乾燥した地域に多くみられ、茎は直立し高さは三〇~六〇センチぐらいである。

9~11月頃、茎頂付近または上部葉腋に一つから数個の紫紅色、時には白色の鐘状の花をつける。開花中でも夜間や天気の悪い日は閉じるが、日が当たってくると再び開く。

大型のエゾリンドウやオオヤマリンドウは根に苦みが少なく、薬剤には不適である。またササリンドウは源氏の紋所となり、由緒ある花と呼べる。

漢方薬剤の生産に厳格な中国であるが、リンドウの適産地は多く、黒龍江省・吉林省・遼寧省など東北三省をはじめ、内蒙古・河北・山東・江西・湖北・湖南・江蘇・福建・四川など比較的広域の適産地を指定している。

栽培の注意事項は気候・土壌ともに温和で湿潤、強烈な日差しを避けることで、腐植的土質が良く、砂質土壌は適していない。

明治以降、ヨーロッパ医学の影響で苦みのある生薬を健胃剤とする考え方が強まり、リンドウやセンブリもスポットライトを浴びてきた。

フランスではリキュールとしてリンドウ酒が入れられている。

この成分として配糖体のゲンチオピクリン、アルカロイドのゲンチアニン、三糖体のゲンチアノーズなどが含まれている。さらにミネラル類も多く、健胃整腸・強壮・補精・血行保温・高血圧・不眠症・食欲増進・利尿・美容などに効果大としている。中薬大辞典によると、特に消化促進作用と抗菌作用(大腸桿菌・枯草桿菌)などに有効であるとしている。

利用法としては煎茶が利用しやすい。薬用になるのは根で、10~11月にかけて根茎や根を掘り取り、よく洗い日干しする。これが薬用リンドウである。直径三センチぐらいの細い根で黄褐色をしており、噛むと強烈な苦みがある。煎茶として粉末が販売されており、一日量として一〇グラムを水二〇〇~三〇〇㏄で煎じ、食後三回に分けて服用する。食欲不振や消化不良など健胃剤としての効力は大きい。

また薬用酒にしても良い。用量は、容器に対して一〇分の三程度。薬店で求めた完全乾燥品であれば一〇分の二~二・五程度とする。砂糖は少なめの大さじ三杯程度。甘味不足の時は仕上がってから好みに応じて調整する。二〇日ぐらいで飲めるようになるが、熟成には三カ月以上が必要。美しい淡黄色の薬酒となり、健胃整腸・利尿・高血圧・不眠症ほかによく、高齢者の強壮・長寿薬としてお勧めする。

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