百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「シャクヤク」
シャクヤク(芍薬)はキンポウゲ科の多年草で、シベリア・モンゴル・中国北部・朝鮮などにわたる広い地域が原産地である。平安時代に中国から薬用として伝来、観賞用としても栽培されてきた。
中国では薬用として、特に「白芍」「白芍薬」と呼び差別化している。そして良品のとれる地方は黒龍江・吉林・遼寧の東北三省と河北・河南・山東・山西・陜西・内蒙古などが主産地となっている。
シャクヤクは草であり木ではない。冬になると地上の枝はすべて枯れ、地中の茎が生き残り、春になると新しい枝が地中から伸びてくる。
植え付けて三~五年後の秋に掘り取った根を調整したものが生薬のシャクヤクである。特に薬用とする場合、花をつけると根が弱るので、つぼみのうちに取り去る。
根を五~一〇センチぐらいに切り、外皮を取り除き水洗いして日干しにしたものを「生干(しょうぼし)芍薬」と呼んでいる。また水洗いした根を煮沸し陰干ししたものを「白芍」とも「眞芍」とも呼んでいる。適地は温暖な気候、排水良好で土層が深厚の地が望まれる。繁殖は株分け法が適している。栽培は比較的難しい。
女性の美しい立ち姿に「立てば芍薬」の言葉が使われるが、このシャクヤクは漢名をそのまま音読みしたものである。
性味は甘・辛・温で、成分として苦い配糖体のベニオフロリン、アルカロイドのペオニン、そのほか揮発油、脂肪油、樹脂、糖、デンプン、タンパク質などが含まれている。
品種として白シャクヤクと赤シャクヤクの二種があるが白は栽培種で生産量も多く陜西省産が有名、赤は野生種である。
薬理をみると優れた性状を持ち、
(1)解痙作用に効果大…筋肉のけいれん痛・胃けいれん・胆石・神経痛などに良い
(2)循環系統によく働く…降圧作用大、冠状血流増加の効果がみられる
(3)鎮痛・鎮静作用がみられる
(4)抗炎・抗潰瘍作用が大
(5)抗菌・解熱作用に効果的
などである。
具体的な利用法をみると、薬膳食法として白芍飲(薬用)、白芍粥などがみられる。
芍薬甘草湯はシャクヤク・甘草各三〇グラムを一日量として煎じて用いる。筋肉を緩和する作用があり、急に起こる筋肉のけいれんによるひきつりや痛みによく効く。
また女性の強い味方の薬材で、(1)婦人のわき腹の痛み(2)治下痢(3)妊娠中毒(4)産後不順(5)生理痛(6)出血過多(7)骨髄疼痛(8)脚気・むくみ‐‐など、極めて広い範囲の薬効を持つ。
シャクヤクを配剤した漢方薬は数十種。代表例をあげると、十全大補湯・建中湯・四物湯・四逆散・桂枝茯苓丸ほかで人気は高い。