百歳への招待「長寿の源」食材を追う「ナツハゼ」

2000.06.10 57号 11面

ナツハゼ、クランベリーは、その鮮やかな色彩と甘酸っぱさから、ジュースやジャムに利用される。また疲労回復、生活習慣病予防、老化防止といった健康効果が高く、薬材としても大いに期待できる。(食品評論家・太木 光一)

ナツハゼはツツジ科の小灌木の小果類で、クランベリー・ブルーベリーなどと同じ仲間。秋の野山で熟れる小果ベリー類の中で最高の味がするというファンも多い。

日本では北海道から九州までほぼ全土でとれ、品種として一五種ほど自生している。常緑と落葉の二種あり、後者が主流である。

樹高は一~三メートル、5~6月ごろ新梢に花序をつけ、球状の果実をつける。大きさは大豆よりやや大きい。秋に入り美しい紅葉となるのでよく知られている。

野生種のナツハゼの果実は六~七ミリと小さいが、栽培すると七~一〇ミリ程度に肥大し加工適性を増す。別名を和製ブルーベリーと呼ばれ、

色彩の美しさ、濃厚な風味、利用範囲の広さでこれから期待されよう。

ブルーベリーは輸送に弱いがナツハゼは保存性が高く遠距離輸送が可能で、出荷期も異なるので競合も少ない。果実は黒褐色に熟した10月頃に採取するが、甘味とともに酸味がみられる。成分としてクエン酸・酒石酸・リンゴ酸などを含み、ビタミンC・カロチン・タンニンなどに恵まれている。このためナツハゼの果実酒(薬用酒)づくりが勧められる。果実酒にすると赤ワインよりも美しいガーネット色(濃紅色)に仕上がり、その色の冴えは数ある果実酒の中ではトップクラスといえよう。まさに絶品である。

色彩の美しさばかりでなく、芳醇な香味を持ち、爽やかな酸味と渋みにもひらめきがみられよう。ストレートにもよく、カクテルにも適している。まだ原料事情がよくないが、栽培が進めば産地の名物となるのは必至である。

効用として疲労回復・強壮・新陳代謝・病後の回復・不眠症・健胃整腸・血行保温・浄血・風邪・鎮静・食欲増進・美容・老化予防が挙げられる。特にお年寄りの保健酒としてもお勧めである。作り方は簡単。ナツハゼ五〇〇グラム、ホワイトリカー一・八リットル(三五度)、砂糖二〇〇グラムで漬け込み、ほぼ一カ月で飲めるようになる。熟成には三カ月以上を必要とする。甘味不足であれば仕上がってから好みで調整を。淡麗至醇の味となり前述の薬効が期待されよう。 このほかナツハゼをジャムにするとブルーベリーに劣らない若者の喜ぶ製品ができあがる。酸味・色合いともよく、名品と呼べよう。またゼリー・ジュース・ヨーグルトソース・シャーベットなど広い範囲で利用が考えられる。色合いの素晴らしさで、他の果物のゼリーやジュースより優れているといえよう。エキスを利用して和菓子作りにもよい。冷凍保存にも適し、ケーキ用・ヨーグルト用などブルーベリー同様の利用も可能。特にナツハゼのエキスは他のどの果汁よりも浸透圧が高く、完全に密封された瓶からでも漏れるほど。この果汁を漬け汁として大根・人参・カブなどに利用すると色彩のよい珍味ができる。純国産の小果の高度利用をお勧めする。

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