百歳への招待=天門冬、鎮咳・利尿・滋養強壮薬として
天門冬はユリ科に属するクサスギカズラの塊根である。ユリ科は北半球の温帯地域に約七〇種みられ、日本には一五種が自生している。オニユリ・ヤマユリ・ニンニク・ニラ・アロエ・アミガサユリ・バイモ(貝母)・アマドコロ(玉竹)・ジャノヒゲ(麦門冬)など漢方薬材として利用されている品種も多い。
多年性の蔓草で肥大な塊根を多数作り、紡鐘形で長さは四~一〇ミリ程度、茎が細く、灰黄色をしている。
温暖で湿潤の地を好み、排水良好な少し砂土質で肥沃な地が適している。中国での主産地は四川・広西・浙江・雲南・陜西・甘粛・湖北・江西ほか。貴州省産が最大で品質面でも優れている。日本では暖地の海辺地方が好まれ、
鹿児島県では野生の産出がみられる。品選びとしてはなるべく大きな物が良品である。
功用主治として、滋養・潤肺・止咳・咳嗽吐血・止渇・夜間盗汗・便秘・痰中帯血・治発熱・強壮などが期待される。
薬理作用として
(1)抗菌作用…対炭疸桿菌・肺炎双球菌・黄金色葡萄球菌・白色葡萄球菌・枯草桿菌などに抑菌作用がみられる
(2)抗腫瘤作業…急性淋巴細胞型白血病・急性単核細胞型白血病患者などに効果が期待
(3)殺滅蚊及蠅幼虫…ほとんど死滅が期待
などがみられる。
天門冬の性味は甘・微苦であるが、天門冬素(アスパラギン)を多く含み、薬膳利用として薬粥・薬酒・薬茶などが作られている。
天門冬粥の効用は肺を清め、腎を壮にし、陰を滋し渇を解するものである。上焦に作用して心熱を清め、肺火を下し、痰熱を化し、肺熱喘咳、吐血口渇を治すに用いられる。また下焦に作用し陰を滋し腎水を壮にし繰を潤し便を利すとある。
別の表現をすれば、鎮咳・利尿・緩和・滋養の強壮薬として、虚した状態の人の咳嗽・咳血・から咳などに用い、大便の燥結などを緩和するものとしている。
天門冬を使用した薬用酒も効用大である。固本酒は地黄・熟地黄・人参・麦門冬・天門冬をベースに作る。黒色濃厚の薬用酒が誕生する。中国薬酒としても有名である。無気力・疲労倦怠・身体枯燥感・食欲不振などによい。滋陰益気の効があり、滋養強壮に効果がみられる。
仙酒は何首鳥・麦門冬・地黄・枸杞子・黄精・杜仲・遠志・蓮子・白求・枳実・天門冬にグラニュー糖・ハチミツを添加する。黒褐色の濃厚特異な臭味を持つが、味はまろやか、滋養強壮・老化予防・精力減退・疲労回復・軽身延年・健忘に効果ある酒が出来上がる。まさに仙酒の名にふさわしい名酒となる。滋養強精酒の筆頭に位する酒となる。このほか天門冬の持つ効能を利用して数多くの漢方薬剤が処方される。いずれも防老延年の効果が大きく、長寿大国に最適の薬材である。