タケノコパワー 真説?これがオトナの竹取物語

1996.03.10 6号 2面

土の中に育つ子供の筍ばかりでなく、竹には昔から不思議な力があるとされてきた。たとえば強壮と血圧の安定、カゼに効くとされるクマザサの若葉、ゼンソクの妙薬である竹瀝(ちくれき=竹の油)など。ハチクの幹の内側についている薄い竹紙(ちくし)にも強壮剤としての効果が期待できるとされ、そんなところからあのかぐや姫は実は竹から生まれたのはウソという説もあるそうで。『竹を知る本 竹は木か草か』(室井綽著、地人書館)から「真説かぐや姫」の一節を紹介しよう。

昔、駿河の国に「竹取りの翁」というものが住んでおり、山野に分け入っては竹を切り、竹細工をつくって夫婦で細々と暮らしていた。

ある日、割りやすく切り口からほのかに甘い恋の香りの漂うすばらしい竹薮を見つけた。その竹かご作りは面白いほどはかどったので、老夫婦は張りをもってなりふり構わず仕事に精を出していたところ、爺さんが大割りする竹から一枚の竹紙(ちくし)が婆さんの着物の裾に舞い込んで奥深く入ってしまった。ややあって婆さんは気分が壮快になり、青春の昔に戻ったかのようにやるせない血潮のうずきに頬を染め、竹紙の甘い香りに人恋しさを感じていた爺さんと、久しぶりに男女の営みを行う羽目になってしまった。しかも竹紙をなめて唾液に混ぜるといっそう効果があり、素晴しい媚薬となるのである。

竹紙を愛用しはじめてからの二人の仲はいよいよむつまじく、還暦の竹の秋を境に日一日と若さを取り戻し、何と八八歳の米寿の祝に可愛い女児を恵まれた。二人は近所の人から「年がいもないたわむれもの」と嘲笑されるのを案じて一計をたて、「割った竹の中から生まれた、かぐや姫」といつわって育てることにした。

この子もまた竹の精を受けただけあって皮膚はつややかに色が白く、三ヵ月で成竹になる竹の子のように百日たらずで成人し、月のものが始まっていっそう美しさを増し、かぐや姫の評判はたちまち国中に広まっていった……

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