教えてあなたのオフィス:京王プラザホテル編 「泊まるだけじゃない・・・」実感

1996.03.10 6号 6面

華やかなロビーに着飾った人々が行き交うホテル。ビジネスに、旅行に、パーティーに、人の心に素晴らしい思い出を演出してくれるところだ。それは豪華絢爛な設備だけではなし得ない。ホテルマンの細かな気遣いがあってこそ「豪華絢爛なホテル」が身近な存在となるのだ。どんな時も優しく丁寧なホテルマン。その笑顔のナゾを解明すべく追跡リポートしてみた。

「ハラが減ってはイクサはできぬ」の社員のハラを満足させてくれる社員食堂を訪ねてみた。

案内された社員食堂は九階にある。大きなガラス窓から日が入りリラックスできるスペースだ。仲間と食べる食事には仕事中とは違った屈託のない笑顔があった。=写真

さてメニューはつねに三種類用意され、好きなものを選ぶことができる。この日の夕食はA・ハヤシライス、B・ひじきご飯と春巻き、C・肉うどん。すべてにデザートが付いて二五〇円という安さ。アルカリイオン水と玄米ご飯、ちりめんじゃこは常備してある。社員の健康を気遣い塩分は一日に二〇g以下、エネルギーは二四〇〇キロカロリーと定めて作っている。シェフの工藤立己さんは「お客さまにお出しするよりむずかしいですよ。毎日食べる社員がお客さまですからね。評価も厳しいですよ。献立は四ヵ月先まで考えています」と語る。

社員用に掲示する「予定献立表」には三週間のメニューのほかに「食とことわざ」と題し興味深い情報も。社員食堂が居心地良い場所となっているのは工藤シェフをはじめスタッフの心配りと感じた。

日本の一大都市「新宿」。東にネオンの街、歌舞伎町。西に都庁をはじめオフィスビル群、と両極端の顔を持つ。新宿へ人々を運ぶ電車はJRだけで一四番線もある。他に京王線、小田急線、西武新宿線、都営新宿線、営団丸の内線の五社がそれぞれに新宿駅を持つ。まさに日本の中心地たる風貌だ。

JR新宿駅西口から徒歩五分。地下から行けば社会的な問題として今話題となっているホームレスの実情。地上から行けばそびえ立つ高層ビル群。どちらも現代日本のリアルな姿だ。日本の社会をかいま見ながら、目指すは今回の追跡地「京王プラザホテル」。地上四七階建ての真っ白なホテルだ。一四八五室の客室、各種レストランをはじめ数多くの宴会場、プール、ショッピングギャラリー等々充実の設備。小さな子供を預かるベビールームも用意されている。子を抱えた親にはありがたい設備。これらのサービスを求めてか、一日の平均利用者はなんと約一万人というから驚きだ。

こちらは本日の約束に遅れまいと一〇分前にロビーに到着。「ちょっと早いかな…」と考えていると「ご案内いたしますが」とさっそくホテルマンがにっこりと登場した。見渡すとどのホテルマンもキビキビ、ニコニコ。

ではでは、追跡開始!

インタビューに答えてくれたのはやはり笑顔の素敵な女性、酒井くみ子さん。入社七年目で現在フロント業務の担当だ。

‐‐まずこの職場を選んで良かったと思うことを教えてください。

酒井 二つあるのですが一番は平日に休みがとれることです。休みの希望日を早めに伝えておけばかなりの確率でOKが頂けますから、旅行の計画など立てやすいです。もう一つは社員教育として、接客マナーや言葉遣いを徹底的に教えてもらえたこと。歩き方や化粧方法なども教えて頂けるんですよ。その他希望者には英会話レッスンを受講することができます。私は平成6年に一年間自主海外研修制度を利用してアメリカのワシントン州に留学しました。

‐‐留学中の職場の扱いはどうなるんですか。

酒井 休職になります。留学を終えても安心して元の職場に戻れました。

‐‐留学生活はどうでしたか。

酒井 大学の語学コースを受講しました。毎日宿題に追われ大変でしたが英会話はレベルアップできました。

でも慣れない生活でのストレスか、仕事を離れたことでストレスから解放されたのか、留学中の一年間で七キロもふえてしまって…(笑)

‐‐今は毎日の食事はどうしているんですか。

酒井 勤務時間によって違いますが一食は必ず社員食堂で食べています。九階にあるので見晴らしはいいし、玄米ご飯も常備してあるんですよ。デザートもついていておいしいです。あとの食事は社員寮に住んでいますから、朝に申し込めば用意して頂けるシステムになっています。体力が必要な仕事ですから私は良く食べますよ。

‐‐仕事で嫌だと思うことはないですか。

酒井 トラブルがあったり、怒りっぽいお客さまがいらっしゃったりといろいろ起こりますが楽しいです。腹がたってもいつまでも怒らず割り切って考えます。同僚と話したり、カラオケに行ったりすればすぐに忘れられます。やはり人と接する仕事が好きですから。

‐‐夢は何ですか。

酒井 リゾートに行きたいですね。仕事の地としても遊びの地としても。あこがれです。

‐‐と、始終親しみやすい笑顔を絶やさない酒井さんだった。

今年で誕生二五周年を迎える京王プラザホテル。新宿では老舗のホテルと言える。社員数は約一二〇〇名と大所帯だ。全社員が「心のこもったサービス」を実践できるよう指導しているということだ。

社内にサークル活動は空手や野球などいくつかあるが、社員自ら自主的に始めた活動に手話サークルがある。

手話サークルの活動は週に一度、毎回三〇名以上は参加するそうだ。「それぞれに勤務時間が違う中で活発な活動をしていることは評価すべきだと思います」とサークル活動を応援する総務人事部副支配人・斎藤信彦さん。今後ますます進む高齢化に向けて、社員自らも必要と考え実行している。

もちろんホテル側も車いすでのお客さまが安心して利用できるよう設備を整えるなど社会の動きに対応している。車いすで利用できる客室は一五部屋。レストランやお手洗いにも車いすのまま移動が可能なように配慮されている。

社員がやってみたいと思うことをバックアップしてくれる企業。また社員の要望にも応えようとする姿勢が社員一人ひとりの満足となり笑顔が生み出されるとも言える。ホテルマンも一個人、何も土台のない環境では笑顔は続かない。二四時間スマイルのナゾは「充実した日々」を過ごしている証明だと言える。サービスを受ける私たちも「ありがとう」の気持ちは忘れないでいたいものだ。

さて京王プラザホテルでは開業二五周年を記念してイベントを用意している。ホテルと同じ一九七一年生まれの方を対象とした「二五歳のフレンドシッププログラム」と結婚二五周年を迎えられるご夫婦に「スイートルームパーティプラン銀の華」など。お問い合わせは03・3344・0111(大代表)まで。

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