自由時間術:モンタナの風に吹かれて・紙上写真展

2000.11.10 63号 5面

連載「あした天気になあれ」でお馴染みの日本山岳ガイド連盟認定ガイド、石井明彦氏は今夏「アメリカ・モンタナ州 グレーシャーカントリー・トレッキング」ツアーを実施。参加メンバーたちの写真展がこのほど開催された。その模様を紙面でも公開したい。

参加メンバーに日本自然写真家協会会員で東京・吉祥寺に「フォトサロン・武蔵野」を展開する鈴木正義氏がいたことから、今回のツアー(一六名)は同じ釜の飯を食う日を重ねるうちに、写真山行の一面が強くなっていったという。

「決して強要したわけではないのに、朝・晩、日の出・日没を撮る私に同行してくれる人が増えていった。それで結構作品が残ったはずなので、せっかくだから半切くらいの大判に焼いてみませんか。みんなで写真展を開いてみませんか、とお誘いしたのが始まりです」(鈴木氏)。

写真愛好家ではない、山歩き愛好家たちの写真展は意外なことに「フォトサロン武蔵野」六年の歴史の中でも、評判のいい展示会であったという。「写真好きが集うこのサロンのお客さんたちにずいぶん“この人たちはどういう人たちなんですか”と聞かれました。ファインダーを覗いた時の感動が素直に表れている。技巧や嫌らしさの全くない、写真の原点のような写真です」。

どうしたら、そんな作品が残せるのだろうか。「自然のダイナミックさを切り取るネイチャーフォトを撮るには、時間帯に一つのポイントがあります。まず“そこにいた”というのが第一。朝寝坊しているメンバーもいるのに、眠い目をこすってその場所に来た。河野さんの作品の場面なんですが、待っている時はただ寒いだけ。来なきゃ良かったと内心思っていた人もいたでしょう。それが太陽が出てきた瞬間、みんな“わぁーっ!”って声を上げたんです。世にも美しい、そんな時間はたった三分間あるかないか。みんな夢中になってシャッターを切っていた」。

旅行中はほかに楽しいことや目指すピークもあるので、そんな瞬間を共有したことも、ワンオブゼムの一つとなって忘れてしまいがちだ。それでもフィルムは覚えている。「私は良い作品なんてない、といっていた人が半切の紙焼きを見たとたん、あの日と同じ“わぁーっ”って声を上げた。感動が蘇ってきたって」。

確かに、写真の楽しさの原点ような話だ。

フォトサロン武蔵野 0422・22・2118

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