百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ヨーグルト

2000.11.10 63号 11面

高タンパク・低脂肪のヨーグルト。コレステロールを下げ、動脈硬化を防いだり制がん効果のあることが分かってきて高齢層まで人気を広げている。一方、なつめは中国で漢方薬に利用されるほど。ともに健康食品として期待される食材だ。

(食品評論家・太木 光一)

ヨーグルトの歴史は古く、紀元三~四世紀に遡る。現在のブルガリア民族の先祖にあたる南スラブ人がバルカン半島に定住し、キセロ・ムリヤコを飲んでいた記録が見られる。

キセロ・ムリヤコとは、酸っぱい牛乳の意で今日のヨーグルトを指す。ヨーグルトはトルコ語であるが、ブルガリアが長い間トルコの支配下にあった名残である。原料は牛乳・水牛乳・山羊乳などで、乳脂肪の高い山羊乳の製品は味が良い。絶品なのは野牛の乳から作ったものである。

ヨーグルトを成分的に見れば、牛乳の変身で全乳を原料とする場合でも固形分を強化するため脱脂粉乳を加える。このためタンパク質は牛乳よりも高く、乳酸や酵素の力によって消化・吸収しやすくなっている。高タンパク・低脂肪の食品となる。

現在ではヨーグルトの研究が進み、効用は

●消化・吸収に優れている

●腸内菌叢を改善する

●コレステロール低下作用がある

●動脈硬化を防ぐ

●制がん効果が大である

などが判明し、高齢層にも人気が高まり、消費も加速するものと思われる。

日本では、乳製品が不振のなかでプレーンヨーグルト・フルーツヨーグルトは注目を浴び急成長を続け、一人当たり年間消費量は五キロを超え、さらに一段の成長が期待される。

ところが世界を見ると、消費量のトップはブルガリアで同三二キロと多い。ヨーグルトなしの食生活は考えられないほどだ。ヨーグルトスープ(タラトルと呼ぶ)を始め、ヨーグルトサラダ(スネジャンカ)、パイ(バニツア)、アイラン(ドリンク)、ムサカ(挽き肉にヨーグルトをかける)など広範に利用されている。隣国のトルコはスープ(スープストックでコメを煮て、バターで炒めヨーグルトを混ぜるなど)、ケバブ(羊肉を焼き、この上にヨーグルトをかける)、メゼ(前菜)にヨーグルトを多用するなど国民食となっている。

ロシアの場合、ヨーグルトドリンクは整腸作用をはじめがん・胆石予防として、飲料やサラダに欠かせないとしている。ロシアから独立したウズベキスタンはトルコから伝えられた味としてアクポシュカ(冷たいヨーグルトスープ)、チャロップ(サラダ)は欠かせないメニューとしている。さらに中国では、スワンナイと呼び、高齢者の益寿補益食品として高く評価されている。理由は

●胃腸の吸収容易、消化効能大

●成分の乳酸菌は食欲を増進

●習慣性便秘に効果大

●高齢者の心血管などの疾病によい

としてヨーグルトをとることを勧めている。

インドやパキスタンではヨーグルトドリンクをライタと呼び、ザクロやマンゴー、焼きなす、ジャガイモを加えたものもある。暑い国なので冷たいプレーンヨーグルトを使用。これからも成長期待大の食材と呼べよう。

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