アメリカンインディアンに学ぶヘルシー生活術:アメリカンインディアンの食卓
「アメリカンインディアンは馬に乗り、野牛を追う狩猟民族であった」。私たち日本人にはそういう認識はないだろうか。しかし、これは誤りだ。気候も様々な広大な北米大陸に五〇〇年前には一〇〇〇近く、いまでも三〇〇近くもの部族が存在する人々が、一様な暮らしをしているというのは、考えてみればおかしなこと。私たちアジア人も草原に暮らすモンゴル民族から農耕民族の日本人まで多岐にわたるように、アメリカンインディアンも、狩猟民族、農耕民族、さらには半農半猟の民族も遊牧民族も存在する。また日本人が全員農業を営んで生活している訳ではないように、必ずしも今日まで、その暮らしぶりをすべて維持している訳ではないが、伝統的食習慣こそにヘルシーライフに生かす知恵が隠れているのは世界の他の民族と同じこと。ここではそのあたりに着目していきたい。
いろいろな暮らしぶりのアメリカンインディアンたちにも食の共通項はある。私たちのコメに相当するトウモロコシは、かなり大多数の部族が主食としている。
現在のニューヨーク州内陸部に定住しているイロコイ族は、トウモロコシ・豆・カボチャの三大作物を面白い栽培方法で育てていた。畑に等間隔に盛り土を作り、そこにまずトウモロコシの種を植え、その茎が伸び始めたら豆やカボチャの種を植える。こうすれば豆やカボチャの若芽はトウモロコシの葉で強い日差しから守られる。豆のツルはトウモロコシの茎に巻き付くので収穫がラク。カボチャの葉は地面を這って雑草が生えるのを防ぐ。三つの作物が協力しあって育つ様子からイロコイ族はこれを「三姉妹」と呼んだ。
「三姉妹」の中でも最も重要な「姉」格がトウモロコシ。イロコイ族はスープや粥、パンなどトウモロコシを使ったメニューを四〇種以上作ることができたという。炒ったトウモロコシは嵩が少なく重量も軽い。携帯に便利でそのまま食べられるので狩りや遠征に出る男たちの携帯食にもなったという。
また一六二〇年、メイフラワー号に乗った清教徒たちが上陸し、プリマスに居を構えた時代のこと。気候は厳しく、最初の数週間で壊血病のため多くの人たちが倒れた。飢えがいまにも入植者たちに襲いかかろうとした時、一人のインディアンが現れ、トウモロコシの種の撒き方、魚の取り方、食料の集め方などを彼らに教えたとされる。やはり、トウモロコシは基盤食材なのだ。