百歳への招待「長寿の源」食材を追う:桔梗(トラジ)

2001.04.10 68号 11面

桔梗(トラジ)と沙参(ツリガネニンジン)はともにキキョウ科であるが、美味な山菜としてファンは多い。また、いずれも薬効の高い漢方薬材として古来から良く知られている。(食品評論家・太木光一)

キキョウは日本全土および韓国・中国などを含む東アジア全域に分布するキキョウ科の多年草で、漢名の桔梗を音読みにしたものである。韓国ではトラジ、中国では白薬・利如・梗草・苦梗などと呼ぶ。古くから山地や原野に自生していたが、現在では栽培種が中心である。花が美しく、しかも上品であるため庭園植物として観賞用ともなっている。

キキョウの利用法は各国でまちまち。日本では春から初夏にかけて若芽や茎の先の軟らかい部分を摘み取り、

山菜として食べる。ゆがいて食べるが、くせのない味で意外とさっぱりしている。浸し物や和え物によい。煮つけにも良く、煮汁をやや多めに、味も薄めにして持ち味を殺さないことがコツ。火を止めてだし味がしみるまで煮含める。そのほか、カラッと揚げて天ぷらにも向く。

韓国はキキョウを巧みに料理し、とくに珍重する。漢方薬材として薬効が高いので、食材として利用している。この根をトラジと呼ぶ。よく知られている哀調あふれた民謡「トラジ、トラジ、トラジョー」は、トラジを掘り取るつらい作業を歌ったものであると聞いた。

各地の市場で縦二つに割いたきれいな白い根をザルに入れて売っている。薬効に優れているばかりでなく、味もよいので、優れた食材とみられている。

数多い調理法の中でナムルがうまい。材料として、トラジ(戻して)二〇〇グラム、洗いゴマ五〇グラム、塩少々、ニンニク一片、糸唐辛子少々、ゴマ油少々、コメのとぎ汁を適宜用意。ほろ苦さの残るトラジのナムルは美味でヘルシー。このほか焼いてしょうゆをつけるとマツタケに近い味となる。また細く刻んで油炒めにも向く。日本で食べるキキョウの根の味と、韓国の味は大差があるように思われる。

厳選した白キキョウの根を使用するからであろう。

中国の利用法はもっぱら漢方薬材としてである。採取は春と秋に年二回行い、よく洗い水中に漬け、外皮をよくとり晒干する。これを桔梗根と呼んでいる。古くから薬効として喘息によく効き痰をとり、よく声を出すのによいとされる。このため咳止め薬が作られている。

扁桃腺炎などでのどが腫れたときにも、根を煎じた汁でうがいすると卓効が見られる。そのほか、乳腺炎・リンパ腺炎など化膿性の腫れ物によく、根の煎じ汁を飲むと腫れが引く。肺脳腫のような難病によく、血糖降下や糖尿病にも効くといわれる。根は二年物がよく、薬膳として強壮効果も期待されている。

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