ヘルシー企業の顔:森谷健康食品・森谷龍一代表取締役社長

2001.05.10 69号 12面

昭和16年、わが国で初めて健康食品を百貨店で販売して以来、豊富で良質な品揃えと、きめこまやかな接客により、多くの消費者の信頼と信用を築いてきた森谷健康食品(株)。健康食品・自然食品業界のリーディングカンパニーとして業界を牽引する森谷龍一社長に聞いた。

現在、当社の取り扱う商品は、三〇〇〇種類ほどあります。その中で本当の売れ筋は二〇〇種類ほどですが、店にはそのベスト二〇〇しか置かないという訳にはいきません。お城の石垣が大きな石だけを積んで出来上がるものでないのと同じ。お客様の症状を聞いてカウンセリングし、「あなたにはこれとこれとこれが、こういう理由でオススメですよ」とお客さま一人ひとりに合った品物を提供する。そのためには圧倒的な品揃えが必要なのです。

当社の販売店は、全国の百貨店の地下食品売場を中心に健康食品コーナーを構えておりますが、ただ機械的にモノを売るのでなく、健康に関する最善のアドバイスや適切なコンサルティングができるよう、販売員は、食品学・栄養学を修得した国家資格の管理栄養士・栄養士や薬剤師、「全日本健康自然食品協会」が実施する指導員養成講座の履修者である食養士、あるいは各研修を終了した者を起用しています。

●ある少女からの手紙

創業者である父は、私が一九の時に亡くなりました。学校卒業後、この仕事を継ぐかどうか迷っていたとき、ある小学生の女の子から手紙をいただきました。「去年の母の日は、お母さんが病気がちで暗く寂しかったのですが、森谷で売っている『小麦はい芽』を飲むようになって、お母さんは元気になりました。家族みんなで本当に感謝しています」という内容でした。それを読んで「ああ、これは素晴らしい仕事だな」と、迷いが吹っ切れたんです。いまでも「おかげさまで元気になった」という一つ一つの声が、私の原動力であり、お客様一人ひとりの健康と生活に役立つことが最大の信念です。

●病気が教えてくれたこと

私自身は毎日一〇種類ほどの栄養補助食品を飲んでいます。妻が毎朝、今日の分を小さなピルケースにセットしてくれるんです。クロレラ・カルシウム・ビタミンEやB群などなど、いいものはすぐに取り入れるようにしています。家族も全員飲んでいます。こういった仕事ですからよけい、いつも健康でいるよう心掛けています。

七年前、あまり仕事をハードにやりすぎて、過労・ストレス・睡眠不足から顔面神経麻痺を起こしてしまいました。病気は私にたくさんのことを教えてくれました。死んでしまったらおしまい。やるべきことはたくさんあるように見えるけれど、自分の力相応に動くことが大切なんだと。その病気を契機にして、短距離選手からマラソン型に切り替えました。永続性が大切ですから、自分の健康も、企業の経営も。

●信用は年月をもって培い分秒をもって損なう

「信用は年月をもって培い、分秒をもって損なう」もの。毎月当社には、何十何百という新しい健康食品の情報が、世界中から集まってきます。しかし売り場の面積は有限ですからそれをすべて採用するわけにはいきません。また、すべての商品を厳格にチェックし、安全性と有効性が確認された健康・自然食品群のみをお届けすることを徹底しています。

昔から「便秘・肩こり・冷え性・ヤセ・ハゲ・セックス」というのは万人の悩み。加えて、二一世紀人の健康を保つキーワードは、肝臓病と精神失調だと思います。肝臓というのは酒だけでまいるものではなく、ストレスが元凶になります。またキレやすい心など精神失調もストレスが原因となります。今後はこれらのケアに役立つ商品が主流になると考えています。

従来の健康食品の開発の仕方は、とかく原材料(X軸)や栄養素(Y軸)を中心に検討されてきました。ところが、近年はむしろZ軸の商品群がめきめき頭角を現してきています。それは、消費者自体の体質・用途・健康目的・病気、あるいはライフスタイルに適した商品群です。いま消費者が何を要求しているのか、何が一番困っているのか、あるいは何をしたいのか、そんな消費者の声に栄養学的な見地からアプローチしていくことが大切だと思っています。

とりわけ流通業界において、この一〇年の間に私たちを取り巻く環境・社会構造は大きく変化してまいりました。ダーウィンの進化論の中に「賢いもの、強いものが生き残るのではなく、変化するものが生き残る」といわれるように、時代の変化に適切に反応・変化していけるかどうかが企業としての生き残るすべであると考えております。

●全く新しい健康食品を発掘・開発

いまのベストセラーの商品群はほとんど、一〇年前には存在していないものばかりです。例えばアガリクスとか、プロポリスとか黒酢とかね、一〇年前はなかったんです。これからまた一〇年したら、全く新しい商材がきっと出てくる。逆にいうと、われわれが一生懸命探せば、あらゆるいいものが発見できるということ。もうすでに生まれているはずなんです。そのための努力を続けます。社内でSSPと称する部隊を結成しまして、面白い商材を発見したり作り出したりするプロジェクトを開始しています。いままでまるっきりないものを一から作り出す、あるいは伝統の中から見つけだすのです。

一方、ロイヤルゼリーやクロレラという横綱格の商品は、これまで通りの人気を続けていくと思います。高齢社会の到来で健康食品の市場は伸びていますから。

これからも、長年培ってきた信頼を大切に、最新の情報をいかにお客様のためになる形にして提供できるかを考えて、事業を展開していきたいと思っています。

●プロフィール

もりや・りゅういち 昭和21年東京生まれ。44年3月一橋大学経済学部卒業後、(株)森谷宮松商店(45年森谷健康食品(株)と名称変更)入社。51年代表取締役社長就任。平成10年ジャパンヘルス(株)代表取締役社長兼務。全日本健康自然食品協会理事長を一〇年間務めた後、昨年6月から同協会最高顧問。(財)日本健康・栄養食品協会常任理事。

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