餅は胃腸を温め元気にするけれど…消化不良には「焦三仙」がオススメ

2001.12.10 76号 7面

中国でも日本でも、餅(もち)好きの人は多い。正月に食べる餅のことを、中国では「年〓(ねんこう)」という。「年高(年々、位が高くなること)」と発音が同じということもあって、正月にふさわしい、縁起のよい食べ物とされてきた。

明代の薬についての書物『本草綱目(ほんぞうこうもく)』によると、餅は「益気暖中(えっきだんちゅう)」とあり、胃腸を温めて元気をつける食べ物と記載されている。餅は消化が悪く、脾胃(ひい=消化器系)を傷つけることがあるので、食べ過ぎは禁物。子供に与える時は、特に注意がいるとも書かれている。

また、餅には甘く粘っこい性質があって、脾胃に長くたまって負担となりやすい。特に、痰・湿に悩まされている人には、餅を控えるよう指導するのが一般的だ。だから正月明けともなると、餅の食べ過ぎからか、胃のもたれや消化不良を訴える人が増える。

中国で消化促進の薬といえば穀類の消化を助ける神麹(しんきく)、麺類の消化を助ける麦芽(ばくが)、肉類の消化を助ける山〓子(さんざし)などの生薬がよく知られている。酸っぱい山〓子には、脂肪分の消化を助け、食欲を増進する働きがあり、中国では病気見舞いに缶詰にしたものを持参することが多い。また、堅い肉を煮込み、肉を柔らかくする時にも山〓子が使われる。神麹は小麦粉、麹(こうじ)、小豆末(しょうずまつ)などを混ぜ合わせて発酵させたもので、麦芽とともにコメや麺、パンなど、デンプン類の消化を助けるといわれている。

山〓子、麦芽、神麹を、それぞれ炒って合わせた焦三仙(しょうさんせん)、これに蜂蜜と砂糖を加え練り合わせて作った丸薬、大山〓丸(だいさんざがん)は、中国の一般家庭で食べ過ぎや消化不良などに幅広く使われている。日本では顆粒タイプのものが「晶三仙(しょうさんせん)」として入手できる。

漢方では、食後にくさいゲップが出たり、胃のむかつき、上腹部の膨満感などの状態を「傷食(しょうしょく)」、前日に食べたものが十分に消化されず、翌日になっても胃にもたれ、食欲のない状態を「宿食(しゅくしょく)」、宿食が長く続く状態を「食積(しょくせき)」などと呼んでいる。いずれも食べ過ぎ、脾胃の消化吸収機能の異常によって引き起こされるものである。

おいしいお餅でそんな状態が起こりがちな年初め、家庭の薬箱に焦三仙を準備しておくのも妙案だ。

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