百歳への招待「長寿の源」食材を追う:カウベリー(コケモモ)
小果とは低木になる小さな果実で、いわゆるベリー類と呼ばれるものが多い。果肉が多汁のため、液果類に含められる場合もある。スグリ類・コケモモ類・ブルーベリー類などで、品種も多く、加工適性にも優れる。全世界に分布、利用価値は大きく、また薬効面も高い。(食品評論家・太木光一)
カウベリーは北半球の寒帯および高山地帯に広く自生するツツジ科の常緑低木で、高さは一〇~二〇センチほど。酸性土壌を好んで生え、茎の下部は地中をはい、根をおろし着生する。7月に入るとやや淡紅色の小花をつけ、10月の初めに小さな丸い南天の実のような液果となり赤く熟す。ヘルマン・ヘッセの作品にしばしば登場する詩情豊かな高山植物である。国内では北海道・本州・四国・九州などの高山帯にみられ、観光開発として地元の名産品にしようとの試みもみられる。
甘酸バランスがよく、生食してもおいしく、赤く熟したものが適品。またペクチンが多く、紅色で光沢が良く、酸味が生きてくるのでジャム加工に最適。ヨーロッパ各国では自家用ジャムづくりが盛んである。シロップ漬けも彩りが良いため長期間楽しむことができる。ジュースづくりにも適している。また果実が赤く美しいので、天然着色料としても利用されている。当然美しいフルーツゼリーやババロア・ケーキのデコレーションにしても喜ばれる。
最近では生果のみでなくジャムとしても輸入されている。漬物(ピクルス)では塩漬けや酢漬けなどもみられ薬用を含めて広範囲にわたる利用が盛んである。
利用法で特に優れているのは果実酒で、世界の名酒の原料となっている。フランスのミルテールはよく知られている。また自家製の果実酒は色鮮やかで美しくソフトなタッチの味は比類がない。
材料はカウベリー七〇〇~八〇〇グラム、砂糖二〇〇~三〇〇グラム、ホワイトリカー一・八リットル。熟成に一年必要で材料は入れたままでよい。カリンやボケを五〇〇グラムほどまぜると風味は一段と増す。
ストレートでもよいが、ワインで割って飲むと抜群の味となる。強壮ばかりでなく、腎臓病・リウマチ・血行保温などによい。
カウベリーはビタミンCが多く、強い酸味はリンゴ酸・クエン酸・酒石酸などで、甘味は果糖とブドウ糖である。これらによって疲労回復・鎮静・整腸・不眠・神経痛などに効果あるとされ、古くから利用されてきた。このほか腎臓や尿道の収れん剤として薬用にされていた。葉もアルブチンやタンニン酸を含み、利尿剤や尿道消毒剤として使われる。
カウベリーは美しい果実を楽しむばかりでなく製菓原料や果実酒にも利用され今後も成長必至。価値ある小果と呼べよう。