百歳への招待「長寿の源」食材を追う:アニス
フェンネルとアニスは、ともにギリシャ時代から重用されてきた古いハーブ。現在ではほぼ全世界に普及、利用度の高いハーブで日本でも栽培されている。ともに特有な香りを持ち、健胃・駆風・痰切りなどに使われている。しかも価格も安く食品としても大活躍している。いずれも慣れてくると、この独特の香りが魅力となる。これからも消費は拡大していくものと思われる。
(食品評論家・太木光一)
アニスも非常に古いハーブで、ギリシャ・エジプト時代から使用されてきた。そして、英・仏・伊・独語ともすべてアニスと呼ぶ。高さは六〇センチぐらいになり、若い時の葉はスペード形でコリアンダーに似ている。トウ立ちしてからは次第に細い三角形に変わる。太陽の照りつける乾いた大地に育つ。しかし緯度の高い北国では条件の良い夏場でないと花は咲かない。世界中の温暖な適地で商業的に栽培されている。特にヨーロッパ東南部・北アフリカ・インドなどで盛んだ。
生の葉はコリアンダーに似て香りが高くサラダとして、種は刈りとって追熟・乾燥されるとアニスシードと呼ばれ、スパイスとして使用する。ギリシャ時代から健胃・駆風・痰切りに良いとされ、古くはこれを束ねて悪魔払いに使われ、信仰の対象にもされてきた。
アニスの臭いは動物や魚も好み、家畜飼料や魚飼にも使われてきた。このほか医薬や髪油・せっけんなどの香料、リキュール酒、製薬用の香辛料、ソースの着香料など広い範囲で利用される。
アニスシードはハーブ系リキュールの重要な材料で、快い柔らかな味を演出する。特にリキュールのアニゼットはアニスシードの香りをつけた飲料で、食欲増進・消化促進などに良いとされる。また興奮剤として寝酒にも愛用されている。特に南フランス地方ではペルーノ・リカール・ベルジェなどパティスと総称される飲料にはアニスシードが多く使われている。このアニゼットで世界的な銘品としてフランス産のキューゼニア・マリー・ブリザードが挙げられる。
スペインや北アフリカにはアニスで風味づけしたソフトドリンクがある。飲料ばかりでなく高級食品にも多く使用されている。エスカルゴのガーリック・バターにパティスを数滴落としたり、スープ・ド・ポワソン(魚スープ)を作る時もオリーブ油に混ぜ込まれ使われている。またインドではカレーに入れたり、魚や野菜料理にも広く使用。食事のあとの口臭消しと消化促進剤としている。
アニスシードは甘く個性的な風味を持っているのでビスケット・ケーキ・クリームなどにも多用。特に東ヨーロッパではシードをそのままパンやケーキに練り込んで食べられている。
現在、アニスの主産地は南ヨーロッパ・ロシア・メキシコなど。日本には南欧産が多くみられる。果柄がついているので砕いて使用する。またアニスの生葉はサラダをはじめ料理の彩りに用いられ、風味が高くて美味だが、ヨーロッパではシード兼ハーブとして広く愛好されている。
特有の味わいが日本でも次第に理解され、普及は急拡大を続けている。この理由として、(1)食欲と消化の増進(2)口臭消し(3)味に深みを出す(4)健胃‐‐ほか広い範囲で効用が認められてきていることによる。











