ヘルシートーク:女優・松井玲奈さん

2021.11.01 316号 05面

映画『幕が下りたら会いましょう』

映画『幕が下りたら会いましょう』

◇物語の中でどんどん変化していく 人間らしい主人公・麻奈美の姿を見てほしい

映画やドラマ、舞台で活躍するだけでなく、小説家としての文才も高く評価されている松井玲奈さん。11月26日から公開される『幕が下りたら会いましょう』では、現代社会の抱える問題に直面しながら、不器用にも真っ直ぐに生きる主人公の女性を演じます。本作が映画単独初主演となる松井さんに、役作りで大切にしていたことや映画の見どころについて伺いました。

●感情表現を抑えて演じることで内に秘めている思いがあふれてきました

この作品は、売れない劇作家である麻奈美が主人公です。過去や家族と向き合いながら、自分を見つめ直し、強く生きる麻奈美役のお話をいただいた時、演じがいがあり、やってみたいと率直に思いました。また、映画単独主演は初めてになるので、そういうポジションを任せていただけるのは、本当にありがたいなと思っています。

麻奈美は、自分の感情や思いを内に秘めている女性。私自身と同世代ではあるのですが、どこか人に甘えていたり、自分自身と向き合うことにずっと目をそむけて生きていて…。撮影に入る前、麻奈美が何を考え、ストーリーの中で感情がどう変化していくのかを監督と何度も話し合いました。監督から言われていたのは「感情表現を抑えてほしい」「ぶっきらぼうに演じてほしい」ということ。だから、腹が立っても、あるいはうれしいことがあっても、その感情を全部抑えて、顔には出さずに演じました。最初は慣れなくて難しかったですね。でも、感情を表に出さないことによって、抑えきれない思いが自然とあふれ出てくるんです。それはいままでにない体験でしたし、だからこそ、その部分を大切に演じていたと思います。

撮影期間中、とくに意識していたわけではないのですが、現場でも静かにしていたり、日常の中でも感情を抑えていた気がします。それだけ、麻奈美という役に向き合っていたんだと思いますね。

●演じていて微笑ましくも感じた不器用さが似ている麻奈美と母

妹・尚の死をきっかけに、家族の絆もテーマになっている作品だと感じています。尚は一緒に映っていなくても、麻奈美の中で大きな存在になっていくので、ずっと尚のことを思いながら演じていました。実際に尚役の筧美和子さんとお会いできたのは、撮影も中盤の頃。「やっと会えた」という思いがあふれて、うれしかったですね。

母親と麻奈美は不器用なところが似ているんです。親子関係は、ぎくしゃくしているように見えながらも、芯の部分ではつながっているから、互いに言葉はなくても通じていて…。母から投げかけられる言葉やしぐさが麻奈美はうれしいのに表には出さない、そんな親子関係は演じていても、傍から見ても、微笑ましくありました。

麻奈美は、過去と向き合いながら、さまざまな人との出会いを通じ、変化していきます。作品を客観的に見ても、その変化はとても興味深いものでした。撮影時、私自身も気づいていなかったのですが、麻奈美の気持ちの変化が着ている服からも伝わってくるんですよね。表情や受け答え、考え方が徐々に変わっていく、そんな麻奈美の姿は人間らしくて魅力的だと思いますし、好きな部分でもあります。ぜひ、注目して見てほしいですね。

「始めることより続けることが大変」–劇中にでてくる麻奈美の台詞。私自身、いまが実際にそうだなと思っています。もちろん、始めるのも大変でしたが、いまもまだまだ学ぶことが多く、力不足だと思うこともあったり。それでも演じ続けたいという強い思いがあるからこそ、大変でもここに身を置いているんだと感じています。

●甘みが強くて大好き!豊橋産ミニトマト「あまえぎみ」

スーパーには、桃が終わる頃に柿も並び始めますよね。大好きな桃と柿が楽しめる時期が、私は毎年楽しみです。

柿はそのままでもおいしいのですが、サラダにして食べるのが好きですね。切った柿とルッコラをオリーブオイル、塩・こしょうで混ぜて、生ハムを添えたらできあがり。柿は爽やかな甘さと歯応えがあるので、サラダのメインになるんです。ルッコラの代わりにベビーリーフを使ったり、小さなモッツァレラや粉チーズを加えてアレンジしてもおいしいですね。見た目もきれいですし、秋はこのサラダが定番です。実は、昨日もつくって食べました(笑)。

私が育った愛知県の豊橋には、おいしい野菜や果物がたくさんあります。中でも大好きなのがミニトマトの「あまえぎみ」。とくに「クレア」という黄色の品種が気に入っています。すごく甘みが強く、皮がしっかりとしていて、パリッとした歯応えもあるんです。まるでスナックを食べているような感覚なので、手が止まらなくなります。収穫時期になるとたくさん食べたくて、豊橋から箱で送っていただくこともありますね。

子どもの頃によく食べていたのは、地元のさつまいもです。干しいもをあぶって食べたり。先日、母が自分の畑でつくったさつまいもをたくさん送ってくれたんです。どれもしっかりと大きさはあるのにすごく甘くて。やっぱり地元の土でつくったさつまいもは、格別においしいなって思います。

●プロフィル

まつい・れな 1991年7月27日生まれ、愛知県出身。2008年デビュー。近年の主な映画出演作は『21世紀の女の子』『ゾッキ』など。NHK連続テレビ小説『まんぷく』や『エール』、TBS火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』に出演。2019年に小説集『カモフラージュ』で作家デビューし、エッセイ集『ひみつのたべもの』、小説『累々』を執筆。

●映画『幕が下りたら会いましょう』 11月26日(金)全国順次公開

[公式サイト]http://makuai-movie.com

Story:実家の美容室を手伝いながら、売れない劇団を主宰している麻奈美。ある日、東京で働く妹・尚が死亡したという知らせが入る。尚が資材置場で死んだ夜、麻奈美は劇団員の結婚祝いで馬鹿騒ぎをし、尚からの着信があったにもかかわらず電話に出なかった…。複雑な思いに揺れながら、尚の部屋を引き払いに東京へ。さまざまな人々との出会い、再会を経て、自分自身と向き合う麻奈美が見つけた物とは?

[キャスト]松井玲奈 筧美和子 しゅはまはるみ 日高七海 江野沢愛美 ほか

[監督]前田聖来 [脚本]前田聖来、大野大輔

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