薬膳の効力(上)気を補い免疫力高める

総合 連載 2020.05.15 12051号 05面
和田暁氏

和田暁氏

新型コロナウイルス感染拡大を背景に、日常生活での免疫力向上が見直されてきている。特に日々の食事は、最も手軽に取り組める健康維持の方法として重要だ。中国の伝統医学「中医学」の海外普及に取り組む世界中医薬学会連合会の常務理事で、薬膳アカデミアファウンダーの和田暁氏に薬膳で免疫力を高める方法などについて聞いた。(藤村顕太朗)

新型コロナウイルスは中医学では疫病の範囲に属し、「湿毒鬱閉肺脾(湿毒が肺脾を閉塞)」と弁証する。つまり、湿毒によって肺(呼吸機能)と脾(消化系)が侵され、これが進行していくにつれ、脾の免疫系が著しく低下。重症になると“お血(血管内凝血)”となり、心・肝・腎など多臓器に障害が及ぶ。

今回、中国・武漢での臨床治療の第一線で中医薬が導入された結果、軽症から重症への悪化が減軽され、軽症の80%以上が治癒した。重症では、ステロイドの使用量が中医薬を使用しない患者に比べて、4分の1で済んだという。

一方、中医学理論に基づく薬膳は、中医学の3本柱(中医薬、鍼灸、食養生)の一つとして、未病先防(病気になる前に防ぐ)、既病防変(病気がさらに進行することを防ぐ)の共通理念の下で、薬膳茶あるいは中医薬投与時に合わせたかゆなどによって、軽症・中等症に大きな役割を果たしている。

「胃喜為補(自分の体に合うもの取ると消化吸収によい)」という中医学の考えから、服薬よりも食事の方が円滑に吸収でき、薬の吸収も助けることになる。免疫力を高める方法として、第一に挙げられるのは「補気(気を補う)」。中医学では「正気存内、邪不可干(十分な正気があれば、邪気に侵されることはない)」という言葉があるように、湿毒に侵されにくい体を作るには「補気」が最も大切。食材としては、例えば椎茸などのキノコ、豆類、山芋などの芋類のほか、消化が良い肉類、魚、発酵食品、雑穀類といったタンパク質を取るようにするとよい。

和田暁氏(わだ・しゃお)中国・上海生まれ。上海中医薬大学を卒業後、同大付属曙光病院に勤務。1986年昭和大学医学部研修、95年薬膳アカデミアを創設。その後、東京有明医療大学などの非常勤講師を経て、2015年世界中医薬学会連合会から世界初の「高級中医薬膳伝授師」の称号を授与

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