ASEANの水ビジネス、コロナ禍で売上げ増

飲料 ニュース 2021.09.22 12295号 04面
ブンロート社が広告に起用した女子テコンドーのパニパック選手は東京五輪で金メダルを獲得した=同社提供

ブンロート社が広告に起用した女子テコンドーのパニパック選手は東京五輪で金メダルを獲得した=同社提供

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う消費者の健康志向などから、タイなどの東南アジア各国で「水需要」が高まっている。水道水ではない体に良いものを求めるニーズが重なり、ビタミンなどを加えた飲料水も登場した。ホテルやレストランでは利用客の減少から水需要が低迷しており、一般家庭向けがけん引している。大手飲料メーカーブランドに加え、OEM(相手先ブランド生産)商品も参入して激しい争奪戦を繰り広げている。

メーカー各社の分析によると、タイの現在の飲料水市場は300億~350億バーツ(約1000億~1100億円)。これが今年は5%程度拡大しそうだ。2000億バーツはあるとみられる全飲料市場が前年比約5%減と落ち込む中、飲料水は着実に市場を拡大している。

中でも特に高い伸びを見せるのが健康をターゲットとしたビタミン入り飲料水などの個人向け飲料だ。新型コロナの感染拡大が始まった昨年は前年の2倍の約22億バーツに市場が膨れ上がった。他の栄養素を配合するなどした機能性飲料もシェアを拡大しており、調理や飲料用に利用される無添加飲料水と合わせ、今年も高い成長が続くと予想されている。

水道水事情の悪化も、皮肉なことに飲料水の市場拡大を後押しした。今年は年初から小雨による水不足が続き、海水が河川の奥地まで浸透する塩害が発生。首都バンコクなど広い地域で水源としているチャオプラヤー川水系の塩分濃度が高まり、水道水が塩辛くなる現象が発生した。

直ちに健康には影響はないものの消費者の敬遠する意識は高く、これが飲料水市場に流れ込んだ。不純物が古い水道管の外壁から染み込み、飲料水を汚染しているのではないかといった従来の水道水不信も再燃。「サイアム」ブランドで知られるTTCサイアム・ドリンキング・ウォーターなどメーカー各社では業務用ではない家庭向け小サイズの飲料水生産を拡大。消費者のニーズに応えている。

新型コロナによる巣ごもりが続く中、オンラインを活用した販促を進め、売上げを伸ばすケースもある。シンハ銘柄で知られる大手飲料財閥のブンロート・ブリュワリー・グループでは、電子商取引(EC)サイトや自社のWebサイトでオンライン販売に注力したところ、平年を上回って利用が高まっているという。このため、家庭向けに飲料水ボトルを縦に積み重ねられるラックを開発して提供するなど人気を集めている。タイで再利用が進んでいるアルミ缶を使ったアルミ缶入り飲料水を発売したメーカーもある。

コロナ禍で飲料水のニーズが高まる動きは、他の東南アジア諸国でも見られる。インドネシアでは、今年の容器入り飲料水の市場は最大7%増加すると多くのメーカーが予想している。

新型コロナの流行は引き続き残るものの、ワクチン接種が進めば屋外活動も順次再開されると読む。最も需要が膨らむ来年4月のイスラム教の断食月(ラマダン)を見据えて、生産設備の見直しや投資が進むとみられている。マレーシアでも北部ペラ州などで、飲料水メーカーによる新工場の建設が進められている。

(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

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