アサヒ飲料、AIで「微生物検査」 業界の課題解決貢献も

飲料 ニュース 2021.12.27 12342号 02面
会見に臨む青柳真人氏(左)と新井誠尚グループリーダー

会見に臨む青柳真人氏(左)と新井誠尚グループリーダー

微生物迅速検査法「FLOX-AI」

微生物迅速検査法「FLOX-AI」

 アサヒ飲料は、清涼飲料製品の品質保証のために出荷前に行う「微生物検査」において、AIを活用した新たな微生物迅速検査法「FLOX-AI」を独自開発したと、23日に発表した。「微生物検査」の工程でAIを活用する取組みは、清涼飲料業界で初となる(同社調べ)。同検査法は、清涼飲料業界全体の微生物検査の課題となる「迅速性」「簡便性」「コスト」解決を目指す取組みとなり、2022年以降に自社工場での運用を開始し、24年以降に業界全体への水平展開を検討していく。

 「微生物検査」とは、製品中に微生物の混入や生育がないことを確認するもので、出荷判定において安全を担保するための最後の工程となる。

 新開発した微生物迅速検査法「FLOX-AI」は、「蛍光染色法」とAI(ディープラーニング画像処理技術)を融合させた同社独自の技術となる。「蛍光染色法」とは、生きている微生物だけに反応する特殊な蛍光試薬で染色し、蛍光検出型装置によって微生物の有無の確認をするものだ。一般的な検査方法の「通常培養法」よりも迅速に検出が可能だが、乳や果汁を多く含む清涼飲料水を検査した場合、「蛍光染色法」では微生物とそれ以外の物質を明確に区分することが困難だった。そこで、微生物の蛍光撮影画像をAI(ディープラーニング画像処理)により、両者の形状や色調などの特徴や量の違いを学習させることで、迅速かつ高感度に微生物有無を検出するアルゴリズム(学習済みモデル)の構築を行ったものとなる。

 23日にオンラインで開催した発表会で研究開発本部技術研究所品質技術グループの青柳真人氏は、「今回開発した『FLOX-AI』はAIを活用するなど、DX推進技術の象徴的存在と考えている。『微生物検査』の課題であった“迅速性”“簡便性”“コスト”を満たし、清涼飲料業界初の迅速検査技術を確立できた。今後は、誤判定リスク低減による、さらなる安全・安心を生む持続的な生産体制の構築や将来的に適用範囲を拡大し、在庫削減や作業時間のさらなる短縮につなげていきたい」と語った。

 新井誠尚同グループリーダーは「作業時間が年間180時間削減可能など、簡便性や効率化にも寄与する取り組みとなる。24年以降は、清涼飲料業界全体に展開していくことも検討しており、この検査方法を、業界全体でのスタンダードにしていきたい」と語った。(本吉卓也)

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